「AIで効率よく答えを出したいわけでは」努力の天才棋士・永瀬拓矢…「鬼の形相でタブレットを」旧知の記者が羽田空港で見た衝撃の光景 

「相手の勝ちパターンに入ってしまったので、力を出し切れたわけではありません。藤井さんは私に対しての勝ちパターンが大きく分けると2つあります。今年の名人戦第3局のように中盤でちぎるような将棋、それから終盤でこちらのエアポケットを突くような将棋。本局はどちらかと言えば後者ですかね。消耗戦だったので、持ち時間がなかったのが痛かった。ただ先後はあまり関係なくて、後手番の不利感は特に感じませんでした。求められるのは実力ですから」

　終局後のインタビューで印象に残ったものがある。

「開幕3連敗をしてしまったので楽しみが少なかった」というものだ。確かに王将戦、名人戦に続いての3連敗は痛すぎたが、この王位戦ではその後に2連勝を挙げた。藤井が七番勝負で連敗したのは初めて。この事実を永瀬はどう見ているのか。

王位戦第5局　©日本将棋連盟

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「正直よくわからないですね。藤井さんとは1局でも多く指せたほうが課題が見えますし、実際に見えてきたのでそこはよい点かなとは思います。でも自分は局面にしかあまり興味がないのでわからない。藤井さんとの番勝負に勝つには棋力を上げるしかないので、そこが求められます」

　その課題を克服する作業は難しいのだろうか。

「いや、そうでもないです。課題が見えていなかっただけで、克服自体は難しいことではない。ちゃんと向き合って解決していけば、今よりはよくはなると思います」

藤井さんと一緒にいて…「概念」について考えるんです

　課題の内容を具体的に明かすのはさすがに難しいようだった。その代わりではないが、最近ずっとテーマになっていることについて話し始めた。

「藤井さんと一緒にいると刺激が多くて、いろいろなことを考えるんです。最近は概念について考えることが多いです」

　概念？

　思わず疑問形で返してしまった。

「例えば将棋って自分から勝ちを目指す指し方と、カウンターを狙う指し方があります。後者は羽生先生（善治九段）がよく使われていて、いわゆる反動のことですね。じゃあ、その反動という概念はどういうことなのか。言葉のうえではなくて、現実的にどう解釈するか。それを使うにあたって、自分にどんなことが足りていないのかを具体的に考えます。形勢判断や、数手後の局面がどう見えるか。つまり大局観のことですね」

自分なりの見解がなくAIの答えを見ては、全く意味がない

　概念を、具体的な技術に落とし込むということだ。それはやはりAIを使って取り組む作業になるのだろうか。

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