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「集団の2人か3人を抜けば…」“大学時代は官僚志望”の24歳が世界陸上マラソンで大躍進…小林香菜が振り返る「7位入賞」サバイバルレースの全内幕
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/25 11:11
酷暑のコンディションの中行われた女子マラソンで一度は入賞圏外まで弾き出されたが、持ち前の粘りで最後は7位まで順位を上げた小林香菜
今回のコースは約8km地点の神保町を過ぎると1周13kmの周回コースを2周する。折り返しが多く、そのたびに自分の順位やトップとの差を把握できる。
「折り返しで集団の人数が分かるので、そこで数えて。後ろの集団全員に抜かれても10番か11番ぐらいになる。そう分かった時に“ちょっと頑張ってこの中の3人に勝てば入賞できるじゃん”と思って。だんだん欲が出てきました」
24km過ぎにエチオピアやケニア、バーレーンらの選手に抜き去られ一気に3位から10位に落ち、入賞圏外に弾き出されたが、それは小林には織り込み済みだった。
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「いつかは来ると思っていました。正直30kmぐらいで来るかなと思っていたので、意外と早く来たなとは思いました。ここからは自分が追いかけようと思って粘りました」
「自分は粘れる」…追いかけ役になった“鬼ごっこ”
今度は自分が鬼ごっこの“鬼”役。1つでも順位を上げるべく、動じることなく前を追った。
「この集団の2人か3人を抜かせばいいんだと、冷静に自分に言い聞かせました。自分自身の大阪国際女子マラソンの走りを思い出して、自分はああいうふうに粘れるからと、落ち着いて走りました」
小林が言う大阪国際女子マラソンとは、一躍脚光を浴びるようになった今年1月26日のレースだ。中間点を過ぎて先頭集団から離され4位に後退したが、小林はそこから驚異の粘りを見せた。パリ五輪6位の鈴木優花(第一生命グループ)に一時は30秒以上の大差を付けられながらも、残り800mで逆転し、日本人トップの2位となりこの世界選手権の日本代表の座を射止めた。
その時のレースが脳裏に浮かんでいた。

