田中希実は「メダル獲ったらどうしよう」久保凛は「何もかもうまくいきませんでした」…世界陸上“2人の中距離エース”に感じた「正反対の言葉力」

　試合後の話が面白い選手は聞いていて勉強になるし、成長する可能性も大きいと思っている。

　世界陸上のミックスゾーンで15分以上にわたって話してくれたのは、女子5000m決勝で12位に終わった田中希実である。試合前、レース中、そして走り終えた直後の感想までのフルコースである。

「今日は自分がレースプランを立てて遂行するというよりは、ハイペースになることが予想されていたので、自分が得意とするハイペースにぶらさがり、粘りぬいて、後ろの方から拾っていくという、私のなかでいちばん好きで、楽しめる走りを想像していました。たとえ、スローペースになったとしてもラスト1000m、800mで勝負したいと考えていました」

予選落ちに終わった1500mの後に調子を上げ、5000mでは決勝進出した田中　©Nanae Suzuki

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　通常、後半のスピード勝負では、アフリカ勢に対して分が悪い。ただし、田中はそこに活路を見出そうとした理由があった。

「1500mの翌日に、1000mを走ったらベストが出て、翌々日に800mを走ったらベストが出て」

　普通は5000mに備えて、タイムトライアルのような強度の高い練習メニューは組まない。

　それでも「火事場の馬鹿力を出したい」と考え、このメニューを組んだという。その結果として、800m、1000mともにベストが出たので、たとえスローペースになったとしても、後半勝負と考えたわけだ。

海外勢も意識していた田中の「位置取り」

　レースは、田中が後方からのレースを選択したことで、スローペースで進んだ。

「予選を見て、みんなは『田中が行ってくれる』と思っていたはずで、エチオピアの人たちが話し合っていたりしていました」

　海外勢が田中の動向を気にしていたのは興味深い。ダイヤモンドリーグでも顔なじみだからだろう。田中が自重したことで、先頭は1000mを3分17秒、2000mを6分19秒という非常にゆったりとしたペースで通過した。

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