田中希実は「メダル獲ったらどうしよう」久保凛は「何もかもうまくいきませんでした」…世界陸上“2人の中距離エース”に感じた「正反対の言葉力」 

　ここで話は急にポジティブに振れる。

「今日は逆にメダル獲ったら、どうしようと考えたので、その意味では、最後の1周まで自分の可能性を信じられたし、感じられたので、自分の限界を決めなかったのが清々しく思った反面、フィジカル、実力の面でまだまだと思い知ったレースで、今日は反省の余地がないというか、完敗、本当に力負けしたと思います」

　そしてこう言葉をつないだ。

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「頭と体の問題が入れ替わった感じがしています」

　様々な葛藤があったことがうかがえる言葉で、いろいろな迷いを持ちながら走り続けていることが分かる。

　これから、自分がどうやって強くなろうとするのか。田中希実の思考回路は、とても興味深い。

新世代のエースが語った「言葉」は…？

　一方、10代で興味深い総括をしていたのが、800mに出場し、予選3組で7位に終わった高校3年生の久保凛だ。

　久保の自己ベストは、日本新記録でもある1分59秒52。2分の壁をなかなか突破できなかった過去の選手たちを、高校3年生が軽やかに超えていった。国内のレースでは、久保は先頭に立ってそのまま押し切ることが多い。

世界陸上初出場となった17歳の久保凛。持ち記録だけを見れば予選通過の可能性は低くなかったが…？　©Kiichi Matsumoto

　しかし、世界陸上の舞台ではそうは問屋が卸さない。

　レースは最初の200mが27秒前後とスローペースの展開。前残りが予想されたが、その時点で久保は後方待機を余儀なくされた。

「スローペースになってしまうと勝てないというのは分かっていたので、前半はまず3、4番手につけて前の方でレースを進めたかったんですが、100mからかぶせられてしまって。うまく前に出ることができず、内側の方に入ってしまって、もう何もかもうまくいきませんでした」

　このあたりの実感は、外国勢との駆け引きに慣れている田中希実とは経験の差がある。

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