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「国際大会の価値は出場することではなく…」世界陸上“最も悔しがっていた日本選手”は誰だった? 慶応大卒「195cmの大器」が世界の舞台で輝く日
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2025/09/23 11:02
レース後、地面をたたいて悔しがる400mハードル代表の豊田兼。全日程を通してもこれほど感情をあらわにする選手はいなかった
パリオリンピックの大会前には肉離れに見舞われたが、それでも出場を強行した。残念なことに、最後は脚を引きずりながらフィニッシュとなった。その姿は、痛々しかったが、それが新たなスタート地点になった。
「去年のパリオリンピックでケガをして、なんとか今年の世界陸上切符をつかみ取って、そこでリベンジしようという気持ちでした」
今季は序盤好調も…日本選手権は予選落ち
今年に入ってからも山あり、谷ありのシーズンだった。
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2025年4月26日に行われたダイヤモンドリーグの開幕戦、厦門大会(中国)の300mハードルでは34秒22の日本新記録で3位に入った(後々、このポイントが効いて世界陸上出場につながった)。
その後、5月3日に行われた静岡国際の400mハードルでは48秒62で優勝、5月18日のセイコーゴールデングランプリではシーズンベストとなる48秒55で2位に入り、順調なシーズンを送っているかに見えた。
しかし、その後は競技会への出場が途絶える。6月にはぎっくり腰にも見舞われた。そして、世界陸上出場に大きな意味を持つ、7月の日本選手権では予選落ちとなってしまう。
この結果を受け、世界陸上出場が危ぶまれていたが、それでも7月下旬にドイツ、8月上旬にベルギーの大会に出場してポイントを獲得し、なんとか世界陸上の代表に滑り込んだ。

