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カーショウ37歳と師匠・黒田博樹引退イヤー“美学の一致”「vs大谷翔平は11打数0安打」「ドジャースひと筋で223勝」21世紀最強左腕の証明
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byRonald Martinez/Getty Images
posted2025/09/22 17:02
21世紀最高の左腕カーショウ。通算成績、日本人関連の数字を見ても興味深いものが続々と発掘される
またシーズン200イニング以上登板を5回も記録。スタミナも抜群だった。
2014年をピークとして、以後は故障に悩まされ年に何度か戦線離脱するようになったが、それでも概ねローテを維持。安定感は抜群で、35歳まではコロナ禍でショートシーズンになった2020年を除き、毎年100イニング以上を投げ続けた。
球速93マイル(150km/h)程度のフォーシーム、スライダー、カーブというシンプルな組み立て。抜群の制球力と、左投手ならではの右打者の懐をえぐるスライダーとカーブで多くの三振を奪った。
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右足を大きく上げて着地する寸前に、もう一度伸び上がるような独特の2段モーションが特徴。走者がいるときは素早く投げることもできた。フィールディングも抜群で、ゴールドグラブ賞も1回受賞している。
318億円契約も納得の“ドジャースひと筋”
2011年から18年まで8年連続開幕投手、通算でも9回はドジャースの記録。2014年に7年総額2億1500万ドル(当時レートで約318億4000万円)という当時投手としてMLBの最高額で契約を更新。2021年に契約満了となったが翌年1年1700万ドルで再契約、さらにこの年オフに1年2000万ドルで再契約。FAとなっても、カーショウ自身にもドジャースにも再契約の意志があり、いわば相思相愛の関係だった。
しかし2023年オフに左肩の手術をし、24年はシーズンの大半を休んだこともあり7試合で2勝止まり。このオフに左ひざと左足の手術をし、25年に再びドジャースと1年契約を結んで今季のマウンドに臨んでいた。
今のMLBでデビューから引退まで、同じチームでキャリアを重ねる「フランチャイズプレイヤー」は極めて珍しい。現役でMLB10年以上のフランチャイズプレイヤーはカーショウを含めて9人だ。
カーショウ(ドジャース)2008~25:18年
アルテューベ(アストロズ)2011~25:15年
トラウト(エンゼルス)2011~25:15年
ラミレス(インディアンス、ガーディアンス)2013~25:13年
バクストン(ツインズ)2015~25:11年
ノラ(フィリーズ)2015~25:11年
ニモ(メッツ)2016~25:10年
ジャッジ(ヤンキース)2016~25:10年
マルケス(ロッキーズ)2016~25:10年
ドジャース史上2位の223勝、3052奪三振はトップ
FA期限が来れば「移籍」が前提になっているMLBである。また本人に契約続行の意志があっても、球団が応じないケースも多い。そういう意味でもカーショウのような存在はもう出てこないかもしれない。

