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カーショウ37歳と師匠・黒田博樹引退イヤー“美学の一致”「vs大谷翔平は11打数0安打」「ドジャースひと筋で223勝」21世紀最強左腕の証明
posted2025/09/22 17:02
21世紀最高の左腕カーショウ。通算成績、日本人関連の数字を見ても興味深いものが続々と発掘される
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広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Ronald Martinez/Getty Images
今季2年ぶりに2ケタ勝利を挙げ、健在ぶりをアピールしたばかりだが、37歳のカーショウにとって、これが引き際の美学なのかもしれない。21世紀最高の左腕投手だった。彼の輝かしいキャリアを成績・貴重な写真とともに振り返っていこう。
高卒でドラフト1巡目…師匠・黒田に学び無双の左腕へ
2006年ドラフト、1巡目(全体7位)でドジャースに。『マネーボール』がベストセラーになって以降「新人を獲得するなら大学生」というトレンドが主流になる中、ハイランドパーク高出身のカーショウは高校出では1位だった。すでにU18全米代表のエースとして全米に知られる存在だった。
この年のドラフトは投手が豊作で、同期1巡目には、221勝のマックス・シャーザー、110勝のティム・リンスカム、104勝のイアン・ケネディ、7巡目には105勝のマイク・リークがいた。2008年5月25日のカージナルス戦でメジャーデビュー。6回自責点2で試合を作るも勝ち星は、最後に登板したクローザーの斎藤隆についた。
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この年、広島からドジャースに移籍した黒田博樹とはローテーションの3、4番手として行動を共にすることが多かった。キャッチボールの相手をしたカーショウは黒田の投げる球の回転に驚き、投球技術について教えを乞うたという。33歳の黒田は、カーショウにとっては良き先輩、良き師だったのだろう。
黒田とカーショウは4年間チームメイトだったが、黒田のドジャース最終年の2011年に、カーショウは21勝を挙げ、サイ・ヤング賞を獲得。以後、2014年までの4年間に3回サイ・ヤング賞を受賞。この時期のナショナル・リーグでは並ぶ者のいない、無双の投手だった。
「投手専任」でMVP、200イニング以上5回の大偉業
2014年、3回目のサイ・ヤング賞の時には、MVPも受賞した。MVP投票では投手は投票の対象ではあるが、21世紀以降「最も優秀な投手はサイ・ヤング賞、MVPは野手が受賞する」という棲み分けができていた。21世紀以降での投手のMVPは、二刀流の大谷翔平を除けば、2011年のジャスティン・バーランダー(タイガース)と2014年のカーショウの2人しかいない。
〈2014年のナ・リーグMVP投票3傑〉
カーショウ(ドジャース)355ポイント
スタントン(マーリンズ)298ポイント
マッカッチェン(パイレーツ)271ポイント
僅差ながら本塁打王のスタントン、OPS1位のマッカッチェンを上回った。WARも8.2で投打通じて1位であり、この年のカーショウが圧倒的な存在だったことを数字が物語っている。

