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「イノウエを囲む記者が多すぎて…」6年ぶり来日の英国人記者が“井上尚弥”を堪能した名古屋の夜「6000マイルかけて日本に来てよかった」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/09/17 11:03

「イノウエを囲む記者が多すぎて…」6年ぶり来日の英国人記者が“井上尚弥”を堪能した名古屋の夜「6000マイルかけて日本に来てよかった」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

試合後、会見に出席した井上尚弥

 私が住むスコットランドから名古屋まではたぶん6000マイル(約9656km)は離れている。かなり遠くまで来たものだが、イノウエの戦いぶりを見てその甲斐があったと感じたものだ。

 私は“スタイリスト”が大好き。イノウエは本当にとてつもないボクサーで、何通りもの戦い方ができることが証明された。戦術面でも優れ、相手次第で完璧にアジャストできる。詳しくは後で述べたいが、今回のような戦い方をすれば、来年に予定されるジュント・ナカタニとのスーパーファイトでもまず負けることはないだろう。

「日本の観客のリアクションが大好きだ」

 私が日本を訪れたのはこれが2度目になるが、本当に良い国だと思う。イギリスとは文化も何もかもが違っていて、私は日本の大ファンだ。別の都市に来られるのは素敵なことであり、単なる出張というより、人生に活力を与えてくれる経験になった。

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 日本の試合会場は欧米と比べて静かだという評判があり、それは今回のIGアリーナも同じだった。セミファイナルのヨシキ・タケイの防衛戦の際も大きな声を出しているのは挑戦者を応援するメキシコ人のファン。メインでもMJをサポートするウズベキスタン人の観客の声援の方が日本のファンのそれよりも大きかった。それでも会場は熱気に満ちていて、特にイノウエが入場してきたときの雰囲気は素晴らしかった。

 試合が始まると、日本のファンはボクサーのパフォーマンスに敬意を払い、固唾を呑んでアクションを見守っていた。それによって嬉しいのは、リングサイドで見ている私たちにパンチが当たる感触がよりはっきり伝わることだ。大きなパンチが当たると、日本の観客は“ハッ”と息を呑むような反応を見せる。ラスベガスなら会場が爆発的に盛り上がるだろうが、日本は少しリアクションの種類が違う。私はそれが好きだ。

 おそらく私が来日する機会が少ないからかもしれないが、ここに来られたことを本当にありがたく思えたし、感謝したくなった。日本での試合を見たことがない人はぜひ一度、足を運んでみるべきだと私は思う。

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