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金髪フィアンセとのキスシーンに騒然? 高校時代はアウトサイダー、「アメリカを捨てた男」と中傷も…世界陸上で話題の棒高跳・デュプランティスとは何者か

posted2025/09/16 17:01

 
金髪フィアンセとのキスシーンに騒然? 高校時代はアウトサイダー、「アメリカを捨てた男」と中傷も…世界陸上で話題の棒高跳・デュプランティスとは何者か<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

世界陸上男子棒高跳で6m30cmの世界新記録を達成したスウェーデンのデュプランティス。「新鳥人」はいかにして成長したのか

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Kiichi Matsumoto

 時計の針は夜の10時30分を回った。そろそろ終電が気になる時刻になってきた。それでも、帰れない。

「帰るに帰れないデュプランティス劇場」がクライマックスを迎えようとしていたからだ。

 当たり前のように優勝を決めて、6m30の世界記録への挑戦。1回目、2回目とも惜しい。特に2回目は、体は十分に上がっていたが、クリアランスのフェイズで太腿の部分がバーに触れていた。

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「モンド」(イタリア語で「世界」という意味)というニックネームを持つアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が、コーチを務めるスタンドの父に向かい、親指と人差し指で空間を作り、「あとちょっと」というサインを送っていた。手ごたえはあったのだ。

追い込まれても…世界新記録達成!

 3回目。観衆はたったひとりの助走に釘付けとなった。そして、跳んだ! 成功! 国立競技場は完成以来、おそらく最大の歓声に包まれた。

 デュプランティスは1999年、アメリカはルイジアナ州生まれ。

 自宅の裏庭で4歳で棒高跳びを始めた。「こんな家庭は滅多にアメリカにはないと思うよ」と話す。そうでしょうね。

 デュプランティスの父・グレッグは、アメリカ出身で自己ベスト5m80の記録を持つ棒高跳びの選手だった。母のヘレナはスウェーデン出身で、混成競技とバレーボールの選手。母が陸上競技の奨学金でLSUと呼ばれるルイジアナ州立大学に留学(フットボールの強豪校で、バスケのシャキール・オニールの母校でもある)、そこで父と母は出会ったのだった。

 父は自宅に簡易な棒高跳びの設備を作ると、4歳のデュプランティスは競技に取り組み始め、7歳にして3m86をクリアしている。その後、7歳から13歳まで年齢別の世界記録を次々に更新していくが、そのプロセスをNHK-BSで放送された『棒高跳び王者 デュプランティス』(原題はBorn to Fly)が追いかけており、これがかなり秀逸な作品だった。

 この家族、ちょっとばかり「巨人の星」の香りがするのだ。

【次ページ】 なぜ棒高跳?…高校時代「自分はアウトサイダー」

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#アルマンド・デュプランティス
#棒高跳

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