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「生理を止めてまで取り組むのは…」“女子体操の減量問題”で杉原愛子(25歳)が明かした過去の失敗…“全員10代”だったパリ五輪メンバーにかけた言葉
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2025/09/10 11:02
インタビューに答える現在の杉原愛子さん
10代の若い後輩選手たちと何を話した?
合宿では調子も良く、パリ五輪までに行った合宿中の3度の試技会ではすべてトップの成績を取ったという。
「やっぱり杉原を入れれば良かったと思わせたいという、負けず嫌いな部分を出しながらやっていたことで、良い意味で成長できたところがあったと思います。それに加えて、初めて補欠という立場を経験させていただいたことで、補欠の責任感や、どうやって周りをサポートするのが良いのかもずっと考えていました」
全員が10代(当時)で五輪経験者ゼロという若き代表メンバーたちには、選手村の様子や海外での生活で役に立つ持ち物などを伝授した。
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「(五輪やアジア大会の)選手村という環境で過ごした経験のない選手もいたので、東京五輪の部屋やリオの時はこうだったよということを説明しました。シャンプーやリンスがなかったことや、断水したことや水が濁っていたりガス漏れがあったりしたこと。食堂ではいろんな競技のいろんな国の選手がいるのでバッジを交換できるとか、お布団は持って帰れるよとか、オリンピックならではの面白さや笑える話もしましたね」
けれども、試合中の経験についてはなるべく話さなかった。
「私自身、初めてのオリンピックは良い意味で怖いもの知らずのまま行けたので、逆に試合の経験はあまり言わない方がいいかなと思っていました。話して怖さが伝わっちゃったりするのは良くないと思ったし、楽しんでほしいなという思いがありました」
テレビで観戦したパリ五輪「絆が深まっているな」
一方で、チームの一体感作りには積極的に参加した。パリ五輪のメンバーの多くはジュニア時代がコロナ禍と重なって海外大会参加の機会が限られており、遠征してもシングルルームでの生活が基本。そのせいか、最初の合宿では「チームというより個人が集まっただけみたいになっていると感じました」という。
体操は個人競技ではあるが、団体戦は互いに苦手種目を補い合い、ミスを補い合って戦うもの。チームとしての一体感があるかないかが成績にも大きく影響する。
「パリ五輪では団体でメダルを獲ることが日本女子チームとしての大きな目標でした。私は補欠なので、田中光強化本部長(当時)のところに相談に行って、チームキャプテンがどういう方向でチームづくりを進めたいと考えていのか、また、各選手が目標に対してどういう役割を持っていくかを話し合うのが良いのではないかと提案しました。それからは合宿で集まる毎にミーティングをして、その回数を重ねるたびにチームの雰囲気も良くなったと思いました」
杉原は直前のモナコ合宿まで同行し、最後まで補欠としての役割をまっとうしてから帰国。パリ五輪は日本でテレビ観戦した。日本女子はエースの宮田を欠くことになったものの、チームとしてのまとまりが素晴らしく、予選を5位という好成績で突破。決勝でも若い選手たちが互いに励まし合い、8位と健闘した。
「パリ五輪のメンバーはリオ五輪の時の私たちのような年代でしたが、“ノリ”ではジュニアの頃から遠征や合宿を一緒にやっていたリオの方が勝っていたかな(笑)。でも、パリのメンバーは合宿毎にどんどん絆が深まっているなと感じていましたし、オリンピック本番はすごく良い雰囲気で演技しているのが伝わりました」


