オリンピックPRESSBACK NUMBER
女子体操・杉原愛子25歳「高校生の時より進化」10代選手たちの中でなぜ快進撃している?「アップも泣きながら…」今明かす“ケガに悩んだ壮絶な日々”
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byL)Asami Enomoto、R)AFLO
posted2025/09/10 11:01
5月のNHK杯では劇的な優勝を果たした杉原愛子さんのインタビュー(第1回)
「茉愛さんに聞いてみたいです」
コロナ禍に伴う緊急事態宣言で練習ができなかった時期に、大学の部活内で大野和邦氏によるオンラインでの体操に使えるバイオメカニクスの講義・解説を受けたことも競技に生かされており、跳馬で使っている「ユルチェンコ1回半ひねり」の安定感も上がっている。杉原は成長の理由をこのように明かす。
「映像で比較したら分かりやすいのですが、以前はホップの時の手の位置が下にあったのですが、今は万歳しているくらい手が上がっています。手の位置によって(跳躍に)伝わるエネルギー量も変わってくるので、質が上がったんじゃないかな。バイオメカニクスの授業で知識を得てからは、なぜ今までやりにくい方法でやっていたのだろうとも思いましたし、研究が楽しくて、体操がより面白くなっていきました」
杉原と言えば会場全体をパッと明るくするエネルギッシュでキラキラとした表現力が代名詞だが、技術面でも確実に進化を遂げているのだ。
ADVERTISEMENT
10月の世界選手権で杉原が目指したいと考えているのは、これまで自身が一度も経験していない種目別決勝の舞台。そこは経験豊富な村上本部長にアドバイスを貰いたいと考えている。
「現役の選手との年齢差より茉愛さんの方が近いですし、茉愛さんとはジュニアの頃から一緒にやっていたので、本部長という立場の茉愛さんへの接し方もわきまえつつ、良い意味で選手同士の時みたいに和気藹々とできる関係をうまく利用して(アドバイスを)聞いてみたいですね」
杉原の進化を支える“シンプルな理由”
それにしても25歳にして10年ぶりに個人総合日本一の座に立てたのはなぜだろうか。年齢に関して聞くと、「高校生の時のほうが体は動きやすかったですし、回復力はあったと思いますが、今が一番すごい進化しているなと感じています」と意に介していない様子だ。
「10代の頃は質より量の練習をやっていたけれども、今は量にも質にもこだわりを持ってケガにも気をつけながらやっています。それに、高校生の頃はコーチから与えられた課題をやるだけだったのですが、大学に入ってから自分で考えることが身につきました。今は考えること、理解することができて、さらには伝えることもできているので、体操の楽しさにどんどん気づいている感じです」
好きこそものの上手なれということであり、楽しさに勝るエネルギーはなしということ。杉原の進化の理由はいたってシンプルだ。《インタビュー第2回に続く》
(撮影=榎本麻美)

