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「高校野球史に残る大論争」佐々木朗希が投げなかった決勝“チームメイトだけが知る真実”とは?「朗希は疲れていた。でも…」先発投手がついに告白

posted2025/09/26 11:04

 
「高校野球史に残る大論争」佐々木朗希が投げなかった決勝“チームメイトだけが知る真実”とは?「朗希は疲れていた。でも…」先発投手がついに告白<Number Web> photograph by L)Asami Enomoto、R)Kiichi Matsumoto

2019年夏、佐々木朗希に代わって先発した大船渡・柴田貴広のインタビュー(第2回)

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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L)Asami Enomoto、R)Kiichi Matsumoto

2019年夏、甲子園出場をかけた岩手大会での出来事は、野球界に大論争を巻き起こした。注目を集めた大船渡高・佐々木朗希投手(現・ドジャース)が、花巻東高との決勝戦の登板を回避したのだ。その佐々木に代わって先発マウンドに上がったのが、同じ3年生の右腕・柴田貴広投手だった。現在、総合不動産企業のオープンハウスグループで営業職を務める柴田さんが、「あの夏」と、「その後」を語った。《NumberWebインタビュー全3回の2回目/第3回に続く

◆◆◆

佐々木朗希が160キロ、194球を投げ抜いた日

 ノーシードの大船渡高は10日間で最大6試合を戦う日程で岩手大会にのぞんだ。7月16日、初戦の2回戦(対遠野緑峰)を5回コールドで退けると、続く一戸戦も6回コールド勝ちと順調に歩を進めていく。ターニングポイントとなったのは7月21日の盛岡四戦。佐々木は延長12回、194球を1人で投げ切った。21個の三振を奪い、8回には当時の高校野球公式戦史上最速タイの160kmをマーク。延長12回には自ら決勝2ランを放ち、試合を決めた。

 準々決勝の久慈戦は翌日だった。さすがにエースの連投は難しい。先発は2回戦でリリーフ登板していた大和田健人に託された。大和田は7回を4失点でしのぎ、8回からは同じ3年生の和田吟太が好投。4−4で迎えた延長11回に大船渡が2点を奪い、大接戦を凌ぎきった。ブルペンで待機していた柴田さんが振り返る。

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「朗希が投げずに勝てた。しかも勝ち方も良かったので、このまま勢いに乗って花巻東も食えるぞ、という雰囲気になっていました。僕たちは『岩手県で一番長い夏』というテーマを掲げていたんです。少しでも長くみんなと居たい。それが現実になるかもしれない。僕自身としては、どうしたら(甲子園メンバーの)18人に残れるか、というところばかり気になっていました」

 中1日で迎えた準決勝は一関工戦。先発した佐々木は9回を129球で投げ抜いた。被安打2、15奪三振と完璧な投球で、最速も157kmをマーク。エースの危なげない投球に、柴田さんら控えの投手陣は試合中にブルペンで肩を作りながらも「今日はオレら(登板は)なくね?」と口々に話していたという。

 甲子園まであと1勝。花巻東を破れば夢の舞台に立てる――。この時点で佐々木は中2日で合計323球を投じていたが、仲間たちは誰もが翌日の決勝もエースが登板するだろうと信じて疑わなかった。翌日、大舞台の先発マウンドに上がることになる柴田さんも、だ。

【次ページ】 「確かに朗希は疲れていた。でも…」

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