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獅子の遺伝子BACK NUMBER
「あの試合の話は…みんな避けていますね」“疑惑”判定→3ラン被弾の横浜高エースが振り返る“慶応旋風”に泣いた夏「甲子園は見ていない」
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/02 11:02
名門・横浜高のエースとしてチームを引っ張った杉山
判定に大混乱→逆転3ラン被弾に…
混乱する横浜ベンチから伝令が送られる。塁審から説明を受けて一度、ベンチに戻ったものの再度、伝令が出て塁審に確認する。しかし、判定は変わらない。遊撃手が二塁ベースを踏んでいなかったという判断だった。
オールセーフで2人のランナーを置いたまま試合が再開。1アウトのあと慶応の3番打者に3ランホームランを打たれ、土壇場で逆転を許した。
甲子園まであと一歩というところだった。
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杉山は回想する。
「悔いは残っていないのですが……。強いて言えば、投げたかったところより高めにチェンジアップが浮いてしまった。カウントはツースリーだったんですけど、フォアボールでもまだ満塁でしたから、そう考えることができたら結果は変わっていたのかなというふうに思います」
“慶応フィーバー”は「全く見られなかった」
冷静さを欠かなければ、と悔やむのは無理もない。
「(セカンドがセーフになった)あのときはなかなか状況が理解できなくて、そのために少し引きずってしまって……。その結果がああいう展開になってしまったのだと思います。悔しいのは悔しいですが、審判の方がそうジャッジしたので、結果は結果です」
どんなことにも揺らいではいけないという教訓を残したと振り返る。
決勝で敗れて野球部を引退したあと、慶応が出場した甲子園大会は全く見られなかったという。決勝の試合が脳裏によみがえったからだ。
うちとは真逆のチーム「負けられない、と…」
その年、慶応高校は甲子園でも勝ち進み、全国に慶応旋風を巻き起こすことになる。「エンジョイ・ベースボール」をモットーに、笑顔で、さわやかにプレーする姿は『令和の高校野球』とも形容された。
「髪型も自由で、丸刈りのうちとは真逆のチームという印象でした。一方で自分たちの高校には長い歴史があって、全国大会の経験も多い。決勝で対戦したときも『だから絶対に負けられないんだ』という強い思いで試合に臨んでいました」


