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記者の予想は「県岐阜商は甲子園出場すら厳しいチーム」横浜vs県岐阜商、波乱のウラ側…監督は“異色の経歴”「33歳から大学に通い、52歳で名門監督になった男」 

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田中仰

田中仰Aogu Tanaka

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/08/20 18:00

記者の予想は「県岐阜商は甲子園出場すら厳しいチーム」横浜vs県岐阜商、波乱のウラ側…監督は“異色の経歴”「33歳から大学に通い、52歳で名門監督になった男」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

横浜vs県岐阜商は延長11回まで続き、7-8の大熱戦。際どいプレーが続いた

 県岐阜商は岐阜県内で屈指の人気校である。今年で野球部創部100周年を迎え、甲子園優勝4回、準優勝6回を誇る超伝統校。公立校とはいえ、室内練習場もあり練習設備は充実している。20人のベンチ入りメンバーのうち18人が岐阜出身。前監督は秀岳館(熊本)時代に3度の甲子園ベスト4へ導いた名将・鍛治舎巧で、昨秋から普通の高校教諭である藤井が新監督に就任した。もともと力のある世代といわれていたが、秋も春も県大会準々決勝敗退。夏の甲子園出場は厳しいと見られていた。

異色の監督「33歳から大学に通った」

 練習終了後、藤井に話を聞いた。抽選会で取材したことを覚えてくれていた。「県岐阜商が公立最後の1校になりまして……ベスト16で最後の砦です」。そう話しかけると藤井は笑みを浮かべて言った。

「公立校として臨んでいるという意識はあります。僕の出身(市立岐阜商)もそうですし、公立で全国制覇するというのが昔からの夢で。社会人野球(一光/愛知)を33歳でやめたあと、大学に2年間通って教員免許を取ったんです。それくらい公立校の監督になりたかったので」

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 公立校の野球部が悩む問題に投手育成が挙げられる。現代の高校野球は大エースが1人いれば勝てる時代ではない。さらに今年の県岐阜商は、3年生の主力投手2人が怪我で戦線離脱した。それを受けて、もともと捕手だった2年生・柴田蒼亮が急遽エースになったというチーム事情がある。

「2枚目の投手育成は本当に難しいです。継投判断も含めて。でも鍛治舎監督は毎年、3人くらい育てられてましたからね。今のチームも、2年生の投手陣でうまくやりくりできれば戦えると思うんですけど。いずれにせよ明日(明豊戦)も早め、早めで代えていきますよ」

「ホテル予約してなかった。勝つのは難しいと…」

 8月17日、3回戦。県岐阜商は明豊を3-1で下す。地元・岐阜新聞のカメラマンがこんなエピソードを教えてくれた。

「明豊戦の日、ホテルを予約してなかったんです。正直、勝つのは難しいと思っていたので。勝った瞬間に慌てて取りました!」

 この試合のキーマンは2番手で登板した渡辺大雅だった。地方大会を含めて初めて登板した2年生左腕が、4回を無失点に抑えた。渡辺本人に藤井が登板する可能性を告げたのは試合前日の夜、宿舎近くの銭湯でのことだった。

「一緒に湯船に浸かりながら話しまして。ゆるい球で相手打者の狙いをかわそうという話をしました」

 捕手の小鎗稜也は、渡辺大雅が明豊打線を抑えられた理由をこう分析していた。

【次ページ】 「横浜相手に空振りをとるのは不可能です」

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