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“群雄割拠”女子100mハードルで高校界に「ある異変」…歴代記録が軒並み更新“衝撃のハイレベル”のワケは?「12秒台を出すと決めていたけど…」
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和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2025/08/20 06:01
各学年の歴代記録が軒並み更新されるなど空前のハイレベルとなった高校女子100mハードル。主役となったのは3人の新星たちだった
栃木県大会も北関東大会も独走だった石原は、タイムレース形式の決勝は自分にアドバンテージがあると考えていた。
「優勝にはあまりこだわらずに、自己ベストを狙いにいきました。プレッシャーはあまりなくて、挑戦者という気持ちで気楽に走れました」
こう話す石原は、北関東大会の後から重点的にスタート練習に取り組んできており、抜群の飛び出しを見せると、全く他を寄せ付けることはなかった。
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記録はなんと13秒30。1.3m/sの追い風を受け、井上が兵庫県大会でマークした記録を上回り、いきなり高校新記録を樹立した。
「もう信じられなくて、自分じゃないみたいな気持ちでした。後半ちょっと(ハードルに)ぶつけちゃったので、そんなタイムが出ると思っていなかったです」
石原自身も驚いたほどのビッグパフォーマンスだった。後の組に登場する井上、福田にプレッシャーをかけるにも十分だった。
前・記録保持者の意地も…吹かなかった「追い風」
これで“前・高校記録保持者”となった井上が、インターハイのチャンピオンになるには、再び高校記録を樹立するしかなくなった。
「(高校記録を)出されちゃったけど、落ち着いて、落ち着いて走ろうと思いました」
2組目に登場した井上は、焦りもあったというが、冷静さを心掛けてレースに臨んだ。
しかし、タイムは13秒40。
2位以下を圧倒したものの、先に走った石原のタイムを上回ることができなかった。自分のタイムを確認すると、井上は涙を浮かべて悔しがった。
「12秒台を出すって決めていたけど、全く届かなかった。まだまだやと思います」
そんな言葉を絞り出した。
悔やまれるのが風の条件だ。2組目の風は向かい風0.3m/s。1組目と3組目は追い風に恵まれており、2組目だけがあまりにも条件が違い過ぎた。
あくまでも参考だが、100m走では風速1.0m/sで記録に0.085秒程度の違いがあると言われている。もちろん風に合わせてレースの組み立て方が変わってくるので、一概にそう言い切れるわけではないが、井上が1組目と同じ1.3m/sの追い風で走っていれば13秒3を切っていた可能性もあったのでないだろうか。


