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「偏差値70超え」公立進学校の野球部が“県大会でベスト4”快進撃はなぜ起きた?「練習は生徒が考案」「時間がないからこそ…」監督と選手の証言
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byYuki Suenaga
posted2025/08/17 11:03
高崎高校を21年ぶりの群馬大会ベスト4に導いた飯野道彦監督
春大会は2回戦負け…ノーシードからの快進撃
ところが、チームは昨秋から今春までなかなか結果が出ずに苦しんだ。
決して例年と比べて実力が低いわけではない。むしろ、各ポジションに中心選手がいることを考えれば、悪くない布陣である。にもかかわらず、実力的には劣っていないはずの県内の公立校相手に簡単に敗れることが相次いだのだ。
広沢は、昨秋が「最も苦しかった」と振り返る。
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「昨夏は練習試合で強豪と言われるようなチームとも良い試合ができて、結構手ごたえをもって秋大会に臨んだんです。なのに1回戦であっさり負けてしまって……」
負の流れを引きずった春大会も2回戦で同じ公立校相手にあっさり敗れ、夏のノーシードが決まることになった。
転機となったのは、今夏の1回戦である。
相手は同じ公立校の群馬高専だった。広沢が振り返る。
「6回まで3点負けていて、完全に負け試合の流れだったんです。エラーで失点して、打てないはずじゃないのに力が発揮できなくて。でも、それを終盤に5点取って何とか逆転することができて、そこで吹っ切れましたね」
優勝候補の一角・桐生第一にも勝利…ナゼ?
タイミングが合っていなかった相手投手が降板してくれた幸運もあり、そのチャンスを逃さずゲームをひっくり返すことができた。結果として、そこからは「とにかく目の前の1試合に集中しよう」というスタンスを取ることができるようになった。それまで、力がついた実感があったからこそ、どこかで先を見て集中を欠いていたナインが一戦必勝のマインドに立ち返るようになったのだ。
そこから陰の立役者となったのが、「分析班」の存在だった。
ベンチ外のメンバーが中心となり、対戦相手の試合映像を見て、相手投手の球種・配球やその割合、クセなどをスカウティングする。打者についても、苦手なコースはどこか、セーフティーバントはあるかなどを調べ上げ、配球の組み立てや守備のシフトに役立てる。こうして完成したデータを、試合前に2時間ほどかけて選手たちが頭に叩き込むのだ。
以降は2回戦で市立太田を8-1、3回戦は前橋をタイブレークの末に9-8と破ると、準々決勝では優勝候補の一角だった桐生第一に6-2で快勝してみせた。
「特に桐生第一戦は本当に分析班のデータが役に立ちました。全部が狙い通りという感じで、先を見てエースを温存してきた相手に対して、2番手投手から先制点を奪って焦らせる……狙い通りの試合になりました」(広沢主将)

