「将来、楽しみかもわからんね」20年前、釜本邦茂が名指しで褒めた“ある選手”とは？“天才少年カマモト”が史上最高のストライカーになれた理由 

　これまた仮説を。プロ化されて、たとえば代表選手の平均値は格段に増した。攻守はうんと組織され、めまぐるしいパスの軌跡は洗練と呼ぶにふさわしい。しかし、あらかじめ「指導の仕組み」に含まれた各種技術は、まんべんなく広まり、ゆえに浅いところにとどまっている。釜本邦茂に確かめてみる。普通の人はいまのほうがうまくなる。違いますか。

「そうそう。でも、そこから先でしょう。上に立とう思ったら他人と違うことしなくてはならない。当たり前や。みな、練習に工夫が足らない。環境が整い過ぎて、それはいいことなんだけれども、自分で自分のことを考えない。いたれりつくせり、なんでも任せておけばいいと」

　昔はよかった。それでは危険だ。「釜本邦茂」を普遍化してはならない。ともかく、ひとりのストライカーが出現した。考える化け物は、考える環境に置かれ、東京五輪へ向けた集中強化にも間に合って、おのれの潜在力を存分に発揮できた。

ADVERTISEMENT

　釜本のあとストライカーはいませんね。浦和レッズGMの森孝慈は、語尾を詰まらす調子で即答した。

「いないっ」

　2004年初頭における事実である。ただしニュースがひとつ。釜本邦茂は、問答のさなか、確かに言った。

「将来、楽しみかもわからんね」

　平山相太についてだ。ゴールの鬼、人をほめる。個人的にスクープと信じている。〈全3回〉

《初出：2004年3月4日発売、Sports Graphic Number597号／釜本邦茂「考えるライオン」はどうして育ったか》

#1から読む

「キーパー、指、裂けとったからね」衝撃の破壊力…釜本邦茂が“史上最高のストライカー”になるまで「修羅場でも絶対に狂わない」「恐ろしい後輩」

#3

「将来、楽しみかもわからんね」20年前、釜本邦茂が名指しで褒めた“ある選手”とは？“天才少年カマモト”が史上最高のストライカーになれた理由

#2

「釜本を育てる…それがサッカー界の総意となったわけや」釜本邦茂は何がスゴかったのか？ ライオンに憧れた少年にあった“もうひとつの才能”

#1

「キーパー、指、裂けとったからね」衝撃の破壊力…釜本邦茂が“史上最高のストライカー”になるまで「修羅場でも絶対に狂わない」「恐ろしい後輩」