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阪神タイガースは創設90年でついに「セ10年間の最強球団」になるか…「少しの不振で戦犯探し」長期的チーム育成が根付かなかった根本的原因
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/02 11:02
藤川球児監督のもとでセ・リーグを独走する阪神タイガース。1リーグ制時代と10年間ごとの成績を見てみると、興味深い傾向が見えてくる
巨人10086試5560勝4189敗337分 率.570優40平2.0
中日10088試5036勝4708敗344分 率.517優9平3.2
阪神10098試4953勝4828敗317分 率.506優6平3.3
広島10085試4692勝5011敗382分 率.484優8平3.9
ヤクルト10085試4552勝5190敗343分 率.467優9平4.1
DeNA10086試4394勝5369敗323分 率.450優2平4.48
中日の記事を書いたときに、地元愛知の人は「巨人対中日も伝統の一戦」と主張することを紹介したが、通算成績で言えば中日は巨人に次ぐ2位であり、阪神は辛うじて5割をキープした3位。冒頭紹介したように「巨人の最大のライバル」というには、数字が伴っていない。
少しの不振で戦犯探し→体制が長続きしない
その原因は……とにかく阪神は「体制が長続きしない」のだ。
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巨人であれば水原茂監督(50~60年)が11年、川上哲治監督(61~74年)が14年、中日でも落合博満監督(04~11年)が8年、広島も古葉竹識監督(75年途中~85年)が11年など「長期政権」があるのだが、阪神は中村勝広監督(90~95年)の6年が最長。人気球団だけに、少し成績不振になると「戦犯探し」が始まる。
また吉田義男、村山実、岡田彰布など大物OBが入れ代わり立ち代わり監督に就くことも多い。メディアが「派閥争い」と書き立てた時期もある。一人の監督に将来を託してじっくりチームを育成する、という文化がなかなか根付かないのだ。
しかし今年、就任した藤川球児監督は「松坂世代」の45歳という若さ。野手はスタメンを固定して使い、投手は一人のエースに負担を集中させない堅実な起用が功を奏している。
成績が落ち込むときもあるだろうが、藤川監督に10年くらいまかせる気になれば、成績は上がるのではないか。
名選手は多いのに「黄金時代」がない
第2回以降で触れるが――野手・投手ともに名選手は数多い阪神だが、巨人、中日、広島、ヤクルトのように「黄金時代」がなかった。球団創設以来90年になろうとする中、初めてのチャンスなのではないか。〈つづく〉

