「本当に“疑惑の判定”か？」朝倉未来の勝利を検証…「勝ちを盗まれた」敗者クレベル激怒も「判定に違和感なし」見解が割れた“あるポイント” 

「まあ、普通に終わったときは3-0で勝ったと思っていて。有効打をもらっていないので。RIZINの判定ってダメージが最優先だと思ったんですけど、ただアグレッシブさはクレベルの方が評価されたのかなと思いました」

　今回クレベルはハイガード（攻撃型というべきクローズドガード）から伝家の宝刀・三角締めを狙っても、前回のようにセットアップすることはできなかった。グラウンドでトップから攻撃を仕掛けようとしても、逆に2度も朝倉にスイープされポジションを入れ換えられた。なぜそうなったかといえば、朝倉が徹底的にクレベル対策を立て、それをいずれも成功に導いていたからだろう。

「僕はスイープは結構得意なんですが、そのうちのただひとつというだけです。特別やってきたわけではなくて、そもそもテイクダウン取られない予定だったので。でもグラップリングの練習とか、あえてテイクダウン取られた状態の練習ではクレベルの対策とは関係なしでずっとやってきたので、それが活きたのかなとは思いますね」

朝倉未来は繰り返しグラウンドでトップをとりパウンドを放った　©RIZIN FF Susumu Nagao

「朝倉未来の勝利」に違和感はない

ADVERTISEMENT

　キャリアを積み重ねるうちに、ファイターはどうしても認められない敗北に遭遇する。もう10年ほど前になるが、70年代のキックボクシングブームに名を刻んだ年配者と杯を重ねている最中のことだ。昔の名勝負について話が及んだとき、突然彼は「あの試合、俺は絶対負けていないから」と声を荒らげ、飲みかけのジョッキをテーブルに叩きつけた。「納得のいかない勝負はこうやって本人の記憶に残っていくものなのか」と驚かざるをえなかった。

　とはいえ、本人の受け取り方と世間のそれは必ずしも一致するわけではない。クレベルの気持ちもわからないわけではないが、「朝倉の打撃をとるか」「グラウンドにおけるクレベルの支配時間をとるか」と問われたら、前者を選択するジャッジが大勢を占めることに違和感はない。

「必ず優劣をつけなければならない」というマストシステムがある限り、この手の問題はまたいつ起きても不思議ではない。これも勝負の宿命であり、MMAの難しさか。

　クレベルがたまりにたまったフラストレーションを発散させるためには、ラバーマッチ実現の機運を待つしかない。