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「本当に“疑惑の判定”か?」朝倉未来の勝利を検証…「勝ちを盗まれた」敗者クレベル激怒も「判定に違和感なし」見解が割れた“あるポイント”
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布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/07/30 17:03
朝倉未来は「2-1」のスプリット判定を制してクレベル・コイケへのリベンジに成功。クレベルが語ったように、判定に“疑いの余地”はあったのか
「何百試合のうち、一、二を争うほど判定の難しい試合」
一方、クレベルの方にもアドバンテージはある。攻めている時間は圧倒的に長かったのだ。RIZINの公式ルールのジェネラルシップの項には「スタンドポジション及びグラウンドポジションに占めた時間割合を考慮して評価を行う」という一文がある。
それに則るならば、クレベルを評価するジャッジがいても不思議はない。「時間を支配する」という観点からみれば、クレベルが優勢だったのだから。
さらにRIZINでは判定にラウンドマストシステムではなく、トータルマストシステムを採用している。UFCが採用する前者はラウンドごとに必ずポイントの優劣をつけるシステムで、後者は試合全体を通して優劣をつけるシステムだ。
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クレベルは「だったら、3ラウンドに試合を優勢に進めた俺の勝ちだろう」と言いたかったのだろうか。印象点という部分では、どうしても試合の後半戦の優劣がクローズアップされがちなことは否定できない。クレベルの「勝ちを盗まれた」という主張の根拠はここにある。
勝利の根拠を問われると、クレベルは次のように答えた。
「自分の方が前に行きましたし、攻めていましたし、フィニッシュに向かって戦っていたと思います。今回朝倉選手は何もしてないです。前にも来てませんし、何もしてない状態だと思いますね。彼は今日勝ったのではなくて、フィニッシュされるのを避けていただけだと思います」
本人の発言通り、前に出て攻めていたことは確か。しかしながら、フィニッシュに結びつく流れはありそうでなかった。向かっていたかもしれないが、それがアクションとして見えづらかったということだ。その一点が朝倉の勝利を支持する根拠になったことは否定できない。
「ジャッジ泣かせの試合だった」
試合後、RIZINの榊原信行CEOが発した一言がこの一戦の全てを物語っているように思える。
「どっちに軍配が上がっても不思議ではない。何百試合と目の当たりにして、一、二を争うほど判定の難しい試合だった」
朝倉未来が勝利を確信していた理由
2-1というスプリット判定は拮抗した名勝負だったという評価もできるが、逆にいえばスッキリした決着でなかったという見方もできる。最終ラウンドのゴングが鳴った時点で、筆者は「何を基準に評価するかによって、ジャッジの見解は割れるのではないか」と予想したが、案の定そうなった。
試合が終わった時点でクレベルが勝ちを確信していたことは明白だが、実は朝倉もスコアが読み上げられる前から自分の勝利を確信していたという。リングアナが最初に「クレベル」と読み上げたときには「“ヤバイだろ”って言いそうになっちゃいました」と打ち明ける。


