絶対王者に中盤まで“衝撃のリード”!?…高校野球「15人だけの連合チーム」が見せた“弱者の兵法”「野球って、やってみないと分からない」 

　ストレートに威力があり、インコースへもしっかりと投げ切れる横山から、福島北と伊達の連合チームは5点を奪い勝利したのである。2ストライクと追い込まれてからの、センターから逆方向へのヒットが多く出始めるなど、各選手のバッティングの内容が向上したことも、菅原を納得させていた。

　8人の福島北と7人の伊達。

　福島の夏を告げる開幕戦に15人の選手が立つ。4校連合チームとの初戦を10-0の6回コールドで終えた菅原は試合後、報道陣から聖光学院戦へ向けたコメントを求められると、控え目にこう答えた。

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「爪痕くらいは残せるかな？」

　本音を言えば勝算はない。ただ、一矢を報いることはできるはずだと菅原は踏んでいた。

「頭でっかちになるくらいなら、思い切って」

　聖光学院はおそらく、センバツにも登板した2年生左腕の古谷野太心か、3年生の主戦である管野蓮が先発する。だからといって菅原は、福島商の監督時代に行ってきた緻密な分析を選手に押し付けることはなかった。

「いくら対策したところで、うちには対応できるバッターがいないので（笑）。頭でっかちになるくらいなら思い切っていったほうが」

福島商時代の菅原監督。今年の連合チームでも「爪痕くらいは残せるかな」と不敵だった　©Genki Taguchi

　菅原がこだわったのは先手を取ること。連合チームのキャプテンである佐藤聖に「じゃんけんで勝ったら必ず先攻を取れ」と命じた。

　高校野球では、9回や10回からの延長タイブレークでサヨナラ勝利を得られる後攻のほうが有利とされているが、それは実力が拮抗した相手あっての話である。

「だって、初回にいきなり5点も6点も取られたら、その時点で……ってなるじゃないですか。だったら、うちが先攻を取ったほうが何かを起こせるんじゃないかと」

　佐藤聖はじゃんけんで勝ち、先攻を選んだ。

　相手の先発は古谷野である。菅原が選手たちに伝えた対策もまた、簡潔だった。

「聖光さんのピッチャーはみんなコントロールが悪くないから、ストライクゾーンにボールが来たと思ったら積極的にバットを振っていけ、と。インサイドをバチバチに攻められたらお手上げだけど、古谷野君がメインで投げるストレートとチェンジアップを外に投げて来たらチャンスがあるかな、と思いました。あとは『追い込まれたら逆方向に』と。選手に指示したのはこれくらいでしたね」

　そして初回。菅原の采配が的中する。

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