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野球クロスロードBACK NUMBER
絶対王者に中盤まで“衝撃のリード”!?…高校野球「15人だけの連合チーム」が見せた“弱者の兵法”「野球って、やってみないと分からない」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2025/07/31 11:02
かつては福島商の監督としてたびたび県大会の上位に顔を出していた菅原裕一監督。今大会は福島北・伊達の連合チームの監督として「ジャイキリ」に挑んだ
菅原がその意義を語る。
「野球が上手な子が多くいるほうが勝てる確率は高いですけど、野球ってバレーとかバスケみたいに点の取り合いになるようなことって少ないし、まぐれが起きるんですよね。ピッチャーのボールは速くないけど、うまく低めに集められればフライで打ち取れるとか、試合運びによっては弱いチームでも戦えるというか。そこが醍醐味なのかなって」
聖光学院がまさに比較対象となる。
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戦力の差が歴然だからといって、菅原は戦う前から白旗を上げるようなことはない。理由のひとつに“免疫”があるのだそうだ。
「我々と聖光さんは同じ県北地区に所属しているので、支部予選などで対戦する機会が多いんです。なので、他の支部の高校よりも名前負けしていない部分があるというか。選手たちにも過度な緊張がないというか、『俺たちでもやれることがあるんじゃないか?』という気持ちがあると思います」
2回戦で王者・聖光学院と…「もう、最高でした」
対戦すると大敗が多い。だが、昨秋の地域大会である県北選手権で、福島北と伊達に加え福島西との3校連合で臨んだチームは決勝で聖光学院と対戦し、1-4と善戦した。こういった小さな成功体験の積み重ねが、菅原たちに自信を植え付けているのである。
6月24日。福島大会の組み合わせ抽選会で、菅原はひそかに拳を握っていた。
「もう、最高でしたよね」
福島北と伊達の連合チームは、福島大会の開幕戦を飾ることとなった。相手は彼らと同じく白川旭、県石川、船引、小野の4校による連合チームだったが、勝算はあった。なにより菅原を嬉々とさせたのは、勝ち上がった先で待つ相手が聖光学院だったことである。
「連合チームなんてあんまり注目されないなかで開幕戦を引き当てて。そこで勝てば第1シードの聖光さんと対戦できて、また注目される。だから、最高だなと」
抽選会があったこの時期、チーム力が高まってきたと実感できていたことも、菅原をより昂揚させていた。
第一の要因としてバッター陣の成長があった。夏の大会前の最後となる福島西との練習試合。1年生が加わったことで単独チームとして夏を迎えることとなったこのチームには、昨秋の県北選手権で連合チームのエースとして聖光学院戦で好投した左腕の横山富洋がいた。

