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「美誠ちゃんの大変さが分かった気がします」涙の世界卓球直後、平野美宇が伊藤美誠から貰った“ある言葉”…60分インタビューで語った「本当の気持ち」 

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高樹ミナ

高樹ミナMina Takagi

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photograph byAsami Enomoto

posted2025/07/25 11:01

「美誠ちゃんの大変さが分かった気がします」涙の世界卓球直後、平野美宇が伊藤美誠から貰った“ある言葉”…60分インタビューで語った「本当の気持ち」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

女子卓球・平野美宇のインタビュー(第2回)

平野 例えば、社会的に見れば私たちはまだ25歳で「これからだよ」って言われるけど、美誠ちゃんも私も幼い頃から卓球をやっているので、同年代の人たちと同じようにはいかないことがあります。だから「練習環境を変えてみたり、休みたかったら休んだり、試合に出るペースもみんなが出るから自分も出なきゃとかじゃなくて、あまり周りを気にせず自分のペースでやることも大事だよ」って。そう言われて確かにそうだなと思いました。

――美誠さんがドーハで銅メダル(自身初の世界選手権メダル)を獲得したのをどう見ていましたか?

平野 美誠ちゃん自身も言ってましたけど、東京オリンピックの時は朝から夜まで必死で練習してメダルを取ったイメージでした。でも、今回は練習量もだいぶ変わってきている(少なくなっている)のに勝ってメダルを取った。反対に私はあまり環境は変わっていないのに、うまくいかなかった。昔は練習に当てていた時間をその分トレーニングに回すなどやり方を見習う部分がありました。美誠ちゃんとは多分お互い、どちらかが頑張って結果を出したら、自分ももっと頑張らなきゃと思っているところがあるから、ここまで卓球を続けて来れたんじゃないかなとも思いますね。

「やっぱり勝たなきゃ意味がない。ただ…」

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――世界選手権で美宇さんが口にした「自分は勝たなければ存在価値がない」という言葉が衝撃的でした。少し時間が経った今もそう思いますか? 

平野 あそこまで思い詰めてはいませんけど、やっぱり競技をやっているからには勝たなきゃ意味がないなとは思います。アスリートは試合で勝つのが仕事だから。ただ、いくら勝ちたいと思っても「中身」が伴わなければ勝てないとも思います。例えばこの1、2年は結果を出したい一心で「とにかく頑張ろう」って、がむしゃらにやってきたんですけど、どんどんしんどくなっていて。そうじゃなくて、中国で強い選手と練習や試合をするのも一つの方法だし、休んでリフレッシュするという方法もある。いろんな方法がある中で、その時々の自分に合ったやり方を見つけないと、どんなに努力しても報われないと今は思います。

――自分に合う方法は見つかりそうですか?

平野 まずは毎日が充実して楽しくないと、大きな目標も達成できないと思います。その点、今回の中国行きはすごく楽しかった。言葉もあまり通じなくて大変なこともありましたけど、いろんな学びがあって「こういうふうにしたら勝てるな」とか「こうしたらもっと強くなれるかも」とか、毎日いろんな気づきがありました。それこそ中国へ行く時には「勝たないと自分の価値は無い」と思い込んでましたけど、そんなことはなかった。それなのに世界選手権の時の私は「勝たなきゃ」という気持ちが強すぎて。言葉にするのは難しいんですけど、もっといろいろ柔軟に試して自分に何が合うかを見つけていきたいです。

――中国の選手たちはそんなに卓球を楽しんでいましたか?

平野 集中する時と、オフの切り替えが上手だと思いました。私はずっと結果を引きずってしまうタイプなのですが、試合がない日には、蒯曼選手が部屋にマンゴーヨーグルトを届けてくれたりして、嬉しかったです。近くで生活することによって、学ぶ部分もたくさんありました。

現地で平野が考えた「中国との差」

――「これからは自分の心にもっと正直に」という言葉もありましたが、自分と向き合って見えてきたものはありますか?

平野 (自分の気持ちは)分からない部分もあるけど、分かっていることももちろんあるんです。でも、自分一人の力で卓球ができているわけじゃないから、あまり(自分の気持ちを)言わないタイプ。常に自分は後回しで、自分が我慢すれば何とかなると思ってしまうところがあるんですよね。でも、そういう積み重ねが試合にも繋がるんだと思います。

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