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獅子の遺伝子BACK NUMBER
今井達也「登板結果は生まれた瞬間に決まってる」西武エースが明かす驚きの人生観「僕、結構涙もろいんです」クールな仮面に隠す“情熱家”の素顔
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/07/22 11:01
西武のエース・今井達也
一見、クールに見える今井だが、その内面は人情にあふれ、熱い人間だ。ライオンズファンの間では有名なエピソードがある。慕っていた先輩・武隈祥太氏(現チームスタッフ)が引退する際に、その意思を継ごうと自ら変更を願い出て、背番号を11から48に変えたのである。引退セレモニーでは武隈氏の肩に顔をうずめて号泣した。
「武隈さんは積極的に人に話しかけたりするタイプじゃないんですよ。でもしゃべってみないと、武隈さんの人柄の良さとか、人間味ってわからない。僕はプロ2年目から一軍にいて、武隈さんももちろん一軍にいたんですけど会話をしたことがなかったんですよね」
慕い続ける先輩・武隈との出会い
入団5年目のシーズンの終わり頃、今井から武隈氏に質問をしたのが始まりだった。
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「武隈さんは体の使い方がうまいので、勉強したいと思っていろいろ質問をしました。それまで本当に接点がなかったので、武隈さんはびっくりしたと思うんですけど、快く受け入れて、深い話をしてくださるようになった。そうしたら、そのあとすぐに引退することになって。『現役のときにもっと話しておけばよかった』という後悔がすごく生まれて……」
武隈氏は物事を多面的にとらえ、人とは違った感性を持っていた。
「一言一言が的を射ているんです。それに僕らが正面から見ているものを、武隈さんは上や斜めから見ている。コーチのアドバイスももちろん大切ですが、そういった指導者とは全く違うことをアドバイスしてくれるんです。天才的で、あの境地にはそんなに簡単にたどり着けない。そういうところはもちろん、何より人間味に惹かれました」
上位に食らいつくチームへの思い
引退試合の際の話になると「僕、結構涙もろいんですよね。自分のことでは泣かないけど人のことでは泣いちゃうんです」と照れくさそうに語った。
もっと話をしておけばよかった。そんな後悔が今、後輩たちに声をかける理由につながっているのかもしれない。
前半戦を終えてライオンズは42勝45敗1分でパ・リーグの4位につけている。先発ローテーションの柱としてカード頭を任される機会が多い今井は、チームの現状をどう見ているのだろうか。

