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「女優は女優だけやってろ、みたいな声も…」身長170センチの女子プロレスラー・天麗皇希がマリーゴールドで“覚醒した瞬間”《特別グラビアインタビュー》 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/07/11 11:00

「女優は女優だけやってろ、みたいな声も…」身長170センチの女子プロレスラー・天麗皇希がマリーゴールドで“覚醒した瞬間”《特別グラビアインタビュー》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

マリーゴールド・天麗皇希の特撮インタビュー(第1回)

「“女優は女優だけやってろ”みたいな声もありました」

 試合は“デビュー戦”の皇希と後藤が勝った。緊張は隠せていなかったが、能力の高さは誰の目にも明らかだった。もちろんそこからも試行錯誤が続いたが。

「団体をやめてきたから当然、批判はあります。“女優は女優だけやってろ”みたいな声もありましたね」

 ファンは元スターダムの選手たちならよく知っていた。だが専門メディアに載らないアクトレスガールズはそうではなかった。

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「どれだけできるんだ?」

 試されているような気持ちは、選手の多くが味わってきた。

 これまで経験したプロレスは“演技”の一環だった。だがこれからは違う。マリーゴールドで練習してみると、知っている技でもかけ方が違うことがあった。覚えることが多い旗揚げの時期、皇希には他にやることもあった。3カ月連続で舞台の仕事が入ったのだ。

 まったくの偶然だったが、とにかく乗り越えるしかない。一番大事な時期にプロレスの練習が足りない。なのに埋もれなかったのは、やはり大器ゆえか。

“起承転結も何もない試合”が天麗を変えた

 視界が開けてきたのは、夏のシングルリーグ戦。必要なのは“場数”だった。あるいは“没頭”か。毎回の対戦相手を研究し、そのことでシングルマッチという基本となる形式に理解を深めた。

 皇希自身、プロレスを難しく考えすぎてしまった部分もあるようだ。

「プロレスラーには、場の空気を読む特殊な能力があるなって。エンタメ、パフォーマンスとの最大の違いはそこだと思います。リングから自分の世界を広げて、会場全体の空気を操っていく。だけどやろうとしてもすぐにはうまくいかないんですよ。当たり前ですよね」

 おそらく皇希が触れたのはプロレスの“神髄”、その一端のようなもの。いきなり鷲掴みにはできなかった。それよりも必要だったのはプロレスそのものにのめり込むこと。それが、MIRAIとのリーグ公式戦だった。

 この試合では「MIRAIさんからのメッセージを感じた」と皇希。MIRAIはスターダム時代からオールラウンダーとして知られるが、この日はひたすらチョップ一辺倒。うまさではなく叩き潰すような闘いだ。

「そうなると私も“絶対負けたくない”ってなるんですよ。MIRAIさんがチョップできたら、私が打ち返せるのはビッグブーツ(顔面蹴り)。何発打たれても返してやるって、その意地だけでしたね」

 チョップとビッグブーツの打ち合いは場外でも続く。

「むしろあの試合はリング内にいた時間のほうが短かったくらいで。理屈で“試合の組み立て”とかを考えたらあり得ない試合でした。起承転結も何もなかったですから。でもそういう闘いをしながら“こういうことかも”と思ったんです」

【次ページ】 「演技をすると嘘になる。芝居をしろ」

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