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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「これを予想できた人はいないのでは」中谷潤人“サプライズ奇襲”の裏で…元世界王者・飯田覚士が懸念した前日計量のある数値「減量苦のバロメーターか…」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/06/11 17:02
日本人世界王者対決となった中谷潤人vs西田凌佑の激闘を元世界王者・飯田覚士が徹底解説した
「中谷選手がアッパーの連打とかやってくると、3発目は普通当たらない位置まで足を使って回避しているのに、パンチがグンと伸びてくる。西田選手からしたら“嘘だろ”とは思ったでしょうね。足を使っても外し切れないと判断して、中谷選手が来た場合は勢いづかせないためにもガードを固めて歯を食いしばって持ちこたえようとした。思ったよりも打たれ強く頑丈でした。後手に回らされたところはあったにせよ、左のカウンターと、ボディー攻撃というのは常に狙っていました。接近戦は用意していたことだったとは思います」
1、2ラウンドは中谷優勢も、3、4ラウンドは西田が反撃に出る。持ち味の左ボディーを見舞い、コンパクトな振りからパンチを的確に当てていく。3ラウンドで右肩を痛めてしまうのだが、中谷の勢いにのまれることなく押し戻していった。
頭によぎった中谷の前日計量での数値
ふと飯田の頭に、前日計量での検診結果がよぎった。
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「中谷選手の脈拍数が100以上とかなり多かったことが、ちょっと引っ掛かってはいました。体温は36.1度で正常としても、脈拍数の多さは減量苦を示すバロメーターにもなります。そうなると後半きつくなるだろうから、短期決戦に持ち込もうとしているのかな、と。実際ラウンドが進むにつれて腰が浮いてきたし、ガードが下がる時間も増えた。これは減量苦が指摘されたフライ級時代の後半、スーパーフライ級の後半でも見られた兆候。腰が浮き気味なところで不用意に近づくシーンもありましたから。
西田選手の左ストレート、ボディーも何発か入り始めていて、タイトルを獲ったエマヌエル・ロドリゲス戦のように得意とするアッパー気味の左ボディーショットがタイミング良くカウンターで決まったら一気に情勢が変わる雰囲気もありました」
「中谷の減量苦」の読みに疑いが…
スタートからかっ飛ばしてきた中谷の強度が下がり、踏ん張って耐えてきた西田の反撃ムードが漂う。疲労度を勝手に自分で大きくしてくれたのだから、西田サイドからすれば出鼻こそくじかれたとあっても願ってもない展開になりつつあった。

