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主犯はレーシング・ブルズ!? モナコGPが前代未聞の超スローペースになったわけ…アルボンは「気に入らないね、ファンに謝罪したい」
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/05/30 17:01

モナコの名所・ローズヘアピンは大渋滞ポイントとなった
なぜ、ウォルフはウイリアムズやレーシング・ブルズに対して、拳を振り上げるような態度をとらなかったのか。それは彼らが決してルール違反を犯してメルセデスを妨害したわけではなく、むしろチームやドライバーたちを縛ろうとしたルールを合法的に消化したに過ぎなかったからだ。その証拠にレーシング・ブルズもウイリアムズも超スローペース作戦によって、必ずしも順位を上げたわけではない。
6位のハジャーから10位のサインツまでは、7番手スタートのハミルトンが5位に上がり、6番手スタートのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がリタイアした以外は、スタート時と同じ並びでフィニッシュした。
問題は、抜けないモナコでオーバーテイクを演出するためにルールを変更してピットストップの回数を増やしたことにある。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はこう言う。
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「ピットストップを10回にしても、ここでは何も変わらない。問題は大きすぎるマシンにある」
モナコの価値とは?
来年からはレギュレーションが変更され、マシンのホイールベースは3600mmから3400mmに、車幅は2000mmから100mm短縮される。しかし、それだけでモナコでオーバーテイクが増えるとは考えにくい。
なぜなら、モナコGPで追い抜きが難しいのは最近の話ではなく、F1が始まった1950年代からの伝統だからだ。92年のアイルトン・セナとナイジェル・マンセルの白熱したバトルも、抜きどころがないモナコだからこそ、生まれた名勝負だった。
モータースポーツの魅力はオーバーテイクだけではない。モナコでは抜けないからこそ、レース以上に土曜日の予選が大事となる。しかし、ガードレールに囲まれたモナコで全力でアタックするには、マシンの速さだけでなくドライバーの経験と腕がいつも以上に問われる。ガードレールすれすれを走るドライバーのテクニックこそがモナコGPの華だ。
そこに価値を見出せないのであれば、モナコでグランプリをやる意味はない。

