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主犯はレーシング・ブルズ!? モナコGPが前代未聞の超スローペースになったわけ…アルボンは「気に入らないね、ファンに謝罪したい」
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/05/30 17:01

モナコの名所・ローズヘアピンは大渋滞ポイントとなった
このレーシング・ブルズの作戦を見て動いたのが、ウイリアムズだった。後ろを走っていたカルロス・サインツが3秒以上遅いペースで走って、前を走るチームメートのアレクサンダー・アルボンとの間に19秒以上のギャップを作っている間に、アルボンは2回のピットストップ義務を果たして9番手を確保。その後ピットストップ義務を終えたアルボンとサインツのポジションを入れ替えて、今度はアルボンがスローペースで後続を抑え、その間にサインツが2回のピットストップ義務を消化。その後、再びチームメート同士でポジションを入れ替え、9位と10位を確保した。
しかし、ダブル入賞を果たしたウイリアムズにレース後、笑顔はなかった。
アルボンは複雑な表情でこう語った。
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「気に入らないね、カルロスも気に入らなかったと思うよ。これは僕たちがやりたいレースではない。でも、レーシング・ブルズが始めたことだから、僕たちも対応する必要があった。気分は良くないけど、チームのためにポイントを獲得しなければならなかった。でも、このレースを見ていたファンの気持ちを害したのなら、謝罪したい」
問題はどこにあったのか
アルボンに指示を出したウイリアムズのジェームス・ヴァレス代表も胸中は穏やかでなかった。ウイリアムズがダブル入賞するために超スローペースで封じ込めた相手が、ヴァレスが2年前まで在籍していたメルセデスだった。メルセデスのトト・ウォルフ代表はレース中にヴァレスから、こんなテキストメッセージが届いたことをレース後に明かした。
「本当に申し訳ない。でも、レーシング・ブルズが仕掛けてきたから、われわれもやるしかなかったんだ」
ウォルフはそれに「わかっているよ」と返信したという。そして、こう続けた。
「ジェームスにはそうするしかなかった。2台の車がポイント圏内にいる状況で、あれが彼がすべき判断だった」