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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「インドを放浪し、歌舞伎町でボコボコにされ…」元世界王者・小堀佑介43歳が明かす“引退後の迷走”「やれることがなにもない…」今は名門ジム会長に
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTadashi Hosoda
posted2025/05/27 11:05

現在は名門・角海老宝石ボクシングジムの会長を務める小堀佑介(43歳)
ナゾの引退後「インドを放浪、歌舞伎町でボコボコに…」
その後のことにも触れておこう。小堀は2009年1月3日、初防衛戦でナミビアのパウルス・モーゼスに敗れて王座から転落。モーゼスにうまく強打を封じられ、見せ場を作ることなく敗れた。ヘルニアを患っていたこともあり、あっさりと引退を決めた。このときまだ27歳。ボクシングを辞める寂しさがなかったわけではない。ただ、「辞めたら何でもできる」とワクワクする気持ちのほうが大きかったという。
ところが……。
「1カ月、2カ月、3カ月とたって、自分にはやりたいことも、やれることも何もないことに気が付いたんです。これには自分でもびっくりしました」
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自分探しならインドだと考え、彼の地を3カ月間放浪した。しかし、なんの収穫もないまま帰国。歌舞伎町でしこたま酔っ払い、ボコボコにされたことを機に「日本にいてはダメだ」とワーキングホリデーを利用してカナダのカルガリーに渡った。職を転々とした。日本人と交流しようとも、友だちを作ろうとも思わなかった。本人曰く「現実逃避」だ。帰るつもりはなかったが、外国人への風当たりが強くなるなど状況が変化してやむなく帰国。日本を離れて3年がたっていた。
名門・角海老宝石ジム会長に就任
帰国後、古巣の角海老グループで働き、この1月に晴れてジム会長に就任した。この間に結婚し、2人の男の子に恵まれた。
数奇なボクシング人生を送ってきた小堀はカナダから帰国後にトレーナーを務めた1年ほどを除き、引退後はボクシングとは無縁の生活を送ってきた。いま、会長という立場となり、選手たちの名前を覚え、少しずつボクシングの水に自分をなじませている。会長職を与えられた以上、一人でも多くのチャンピオンを育てるのが自らの責務だと感じている。