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韓国でも熱視線の大谷翔平へ“つなぐ9番”キム・ヘソン「打率4割台でマイナー危機」に祖国やきもき…“父は元中日”イ・ジョンフらも苦境
posted2025/05/21 06:00

メジャー昇格後、高打率をキープするキム・ヘソン。大谷翔平へとつなぐ9番打者として生き残れるか
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
昨年9月、韓国プロ野球(KBO)を観るために訪れた釜山で、食堂でランチを食べていると店内のテレビがスポーツニュースを始めた。トップニュースは「大谷翔平」だった。専門家がなぜ大谷は本塁打が量産できるか、数字を使って詳しく説明していた。
韓国はいろんな分野で日本をライバル視する。野球の分野でも同様で、イチローの現役時代、韓国メディアは「鈴木(MLB通算117本塁打)よりもチュ・シンス(秋信守/218本)の方が強打者だ」と言っていた。しかし昨今、大谷が見せる異次元の活躍は、韓国のそういう意識も吹っ飛ばしたようだ。同じ東アジアの選手として、素直に喜ぶ空気になっているように感じる。
特に今年、ドジャースに移籍したキム・ヘソン(金慧成)が、5月になってメジャーに昇格し、9番打者として大谷につなぐ役割で活躍し始めてからは、韓国メディアは毎日のように大きく報道した。5月14日にキム・ヘソンがMLB初本塁打を打った時には、次打席の大谷は右手に左手を添える韓国流のタッチで祝福。韓国のファンは歓喜した。
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しかし韓国ファンは今、キム・ヘソンが今後も大谷とプレーできるかどうか、やきもきしながら見守っている。
韓国メディア「こんなに活躍してもダメなの?」
キム・ヘソンは、高校から2017年2次ドラフト1巡目でネクセン・ヒーローズ(現キウム・ヒーローズ)に入団。当初は守備の人として二塁手、遊撃手として活躍したが、次第に打撃でも頭角を現し、4年連続で3割をマーク。盗塁王も獲得し、東京オリンピックにも出場した。
2024年オフ、ポスティングシステムでのMLB移籍を表明、今年1月、ドジャースと3年総額1250万ドルでメジャー契約を結んだ。しかしスプリングトレーニングでは15試合29打数6安1本2盗、打率.207とアピールできず、マイナースタートとなった。
傘下のAAAオクラホマシティでは、打率.252ながら5本塁打19打点、OPS.798、盗塁は13回企図して失敗なしという活躍だったが、層の厚いドジャースのベンチになかなか加わることができなかった。韓国メディアは「こんなに活躍してもダメなのか?」と書き立てた。
5月に入って、トミー・エドマンやテオスカー・ヘルナンデスがIL(負傷者リスト)入りしたことで、ようやくメジャー昇格が決まった。
2試合は守備固めと代走だったが、5月5日に9番二塁でスタメン出場すると2安打を放ち、以後、1番大谷につなぐ打者としていい活躍をした。キム・ヘソンは、二塁のほか遊撃も守り、さらに外野も守る。守備力の高さはMLBでも評価されるようになって初本塁打も打ち、現地5月18日時点では打率.452、OPS1.065の大活躍だった。
大谷、エドマンとの“競演”を楽しみにしていたが
しかし、IL入りした選手の復帰が近づいていた。トミー・エドマンらレギュラー陣が帰ってくれば、キム・ヘソンはまたマイナーに降格するのではないか――とささやかれていたのである。