革命前夜~1994年の近鉄バファローズBACK NUMBER
「そのことは、改めてお話しします」野茂英雄“2軍落ち直訴”の噂に本人を直撃も…31年後に阿波野秀幸が教えてくれた答え「あれが決定的だった」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byTakahiro Kohara
posted2025/05/16 11:02

取材に対応する、現役時代の野茂。1994年、事件の噂を聞いた筆者も本人を直撃すると…その返答は意外なものだった
「正直、俺だっていたたまれんかったよ。要は、小池を誘ったのは俺らやから、俺らの責任やからね。気を利かして、先に帰らせればよかったんやけど、朝まで無理矢理、引っ張っていたんやし……。
それについて、小池は別に、俺らにどうのこうの言うこともなく、ファームに行くときも『とりあえず、頑張ってくるわ』って。そりゃ、責任感じるやん。野茂もやっぱり、負い目を感じているし……」
鈴木啓示の説明
小池、出場選手登録抹消。
ADVERTISEMENT
選手の1、2軍の入れ替えは、NPBから公示されるため、番記者も試合前には知ることができる。それを当然ながら、監督会見で質問することになる。
「小池は、自己管理がなっていない」
鈴木は、ファームへ落とした理由をそう語った。低迷する近鉄の現状を象徴するかのような出来事を、メディアもつい、センセーショナルに報じてしまう。
佐野は、その配慮のなさにも怒りが倍増したという。
「会ったコーチたちの胸の内にでも留めておいてくれたらええやん。それを、監督に報告しているわけやん。『朝、帰ってきよった』って、告げ口したのか、冗談半分で言ったのか分からんけど、そしたら2軍に落とされたわけやん。
野茂は、自分で言いに行ったんよ。『俺も落とせ』って。そしたら、監督は言わんかったらしいんやけど、周りのコーチが言ったらしい。『お前はチームのエースなんやから、そんなこと言うな』って。諭すつもりやったんやろうけど、そりゃ、野茂が納得するわけない。今、振り返ってみても、あんなにモチベーションの下がった野茂もおらんかった。野茂、めっちゃ怒ってた」
説明されなかった裏事情
野茂と佐野は、小池と一緒にいた。なのに3人ではなく、小池だけが2軍へ落ちるというペナルティを食らった。そうした詳細は、球団から説明があったわけではない。