革命前夜~1994年の近鉄バファローズBACK NUMBER
「そのことは、改めてお話しします」野茂英雄“2軍落ち直訴”の噂に本人を直撃も…31年後に阿波野秀幸が教えてくれた答え「あれが決定的だった」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byTakahiro Kohara
posted2025/05/16 11:02
取材に対応する、現役時代の野茂。1994年、事件の噂を聞いた筆者も本人を直撃すると…その返答は意外なものだった
私が、断片的にその“裏事情”を掴んだのは、数日後のことだった。
どうも、小池だけじゃないらしい。そのふわっとした噂を、親しい選手や関係者にあててみると「野茂もおったらしいで」。
じゃあ、なんで、2軍に落ちてへんの?
野茂を直撃した筆者に…
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プロ野球担当1年目。遠慮も恐れも忖度もない。
当時27歳の鉄砲玉記者はある時、石井浩郎に「喜瀬君、今、俺に何か聞こうとしているやろ?」と機先を制するかのように指摘されたことがある。
「何で分かるんですか?」「俺に質問するとき、いつも、小鼻が膨らんでるからな」
多分、その時もきっと、目いっぱい開いていたと思う。この話、ホンマやったら、原稿にできるわ、という下心たっぷりに、野茂に直撃した。
「そのことは、また改めて、ちゃんとお話しします」
否定も肯定もしないどころか、丁寧に“回答”を約束してくれたのだ。
野茂が話してくれるまで
これ、ホンマなんやな……。その返答と、関係者らに確かめた“状況証拠”だけで、もう、十分に書ける内容だ。
野茂、怒りの2軍降格直訴——。
ただ、その時、なぜか書くのをためらった。普段はぶっきらぼうな感がある野茂がいつになく、こちらの下世話な噂話の直撃に、真摯に答えてくれたのだ。
何か、きっと、言いたいことがあるんだろうな……。私は、野茂が話す“その時”を待ってみよう、と思ったのだ。

