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世界5階級制覇の“レジェンド”藤岡奈穂子がシュートボクシング高橋藍と“結婚式”…出会いと絆「同性婚」を語る「どんな反応が来るか心配でしたが…」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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posted2025/05/12 11:00

世界5階級制覇の“レジェンド”藤岡奈穂子がシュートボクシング高橋藍と“結婚式”…出会いと絆「同性婚」を語る「どんな反応が来るか心配でしたが…」<Number Web> photograph by Haruka Sato

5月11日には親族や友人、格闘関係者など160人を招待して盛大なウェディングパーティーを開いた

きっかけは「出稽古」

 二人の出会いは10年前の2015年夏に遡る。藤岡さんがシュートボクシングの試合を観戦した縁から、高橋さんが一緒に練習をさせてもらえるようお願いしたことがきっかけだった。藤岡さんは当時すでに女子世界ストロー級、同スーパーフライ級を制しており、女子ボクシングの草分け的な存在。出稽古を重ねるなかで、その強さに高橋さんは大きな衝撃を受けたという。

 高橋 「もう別格、という強さでした。私にない引き出しがいっぱいあって、この人から吸収しなければこの先、私の伸び代はないと思いました。一番刺激を受けたのは戦略の立て方や練習に対する考え方。それまでの私はとにかく練習は量をやれば強くなると信じていたんです。でも『ハハハ、練習やりすぎ』って笑うんです。『引き算をもっと覚えたほうがいい』って」

 47歳まで現役を続けた藤岡さんは、フィジカルとハートのタフさだけでなく、技術と戦略を携えて第一線を走り続けてきた。練習量で心身をすり減らすことはせず、プライベートでは大好きなお酒も存分に楽しむ。

「柔軟な強さ」に惹かれて…

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 藤岡 「試合に勝つための練習しかしないですね。それ以上はやっても集中力が持たないので怪我にも繋がるし疲れるだけじゃないですか。二十代の選手と同じ練習はできないので、自分で考えていかないと。(高橋さんは)自分とは真逆でめちゃくちゃ真面目で、絵に描いたような格闘家。だからこそ少し危うさも感じて『引き算を』という話をしました」

 この頃すでに現役引退を見据えていた高橋さんは、藤岡さんとの出会いで価値観が大きく揺り動かされたという。練習量を増やすだけではない向き合い方を学び、現役最後の試合ではそれまで3度の対戦で全て負けていた相手に勝利して有終の美を飾った。

 高橋 「藤岡さんと出会って、選手として、人として“柔軟な強さ”というものを感じたんです。レジェンドと言われるのはこういう人なんだな、って」

「この感情は何なのだろう…」

 アスリートとしてお互いに尊敬し合う思いは、自然に愛情へと変わっていった。それまで恋愛対象は男性だった高橋さんは当初「憧れのドキドキなのか、恋心なのか、この感情は何なのだろう」と戸惑ったそうだ。現役引退後はライターとして働きながら、日本ボクシング連盟の理事やトレーニング指導もこなし、一方ではパートナーとして藤岡さんを一番近くで支えた。

【次ページ】 “同性婚”を伝えた両親の反応は…

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