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「だから田口(真彩)でした」わたがしペアを解散した渡辺勇大が、19歳の新星と組んだ“決定打”とは?「田口は気遣い屋」「とんでもない成長力だな」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byL)AFLO、R)Shiro Miyake

posted2025/05/13 11:01

「だから田口(真彩)でした」わたがしペアを解散した渡辺勇大が、19歳の新星と組んだ“決定打”とは?「田口は気遣い屋」「とんでもない成長力だな」<Number Web> photograph by L)AFLO、R)Shiro Miyake

ロサンゼルス五輪を目指す渡辺勇大が新ペアとして選んだのは、19歳の新星・田口真彩だった

「だから田口でした」渡辺が明かす“ペア結成の決定打”

 その中で強く印象付けられる出来事があった。

「彼女が高校生のとき、学校に行って一回だけ一緒に練習したことがあるくらいです。映像とか成績とかいろいろなものも見ましたが、いちばん大きかったのはそのときに感じた、一生懸命なところです。その高校全体も一生懸命にやる選手が多くて、『すごいな、僕は高校生のとき、こんなに一生懸命だったかな』って思うくらい必死に頑張っていましたけど、田口と一回羽根を交えたときに、特に一生懸命であるのを感じました。

 もちろん技術が高い選手はたくさんいるし、成績が出ている選手もたくさんいます。もしかしたらそういう選手と組んだ方が結果が出るのは早いかもしれないし、結果を残せるかもしれない。でも僕は一緒にわくわくして、一緒に成長して世界一を獲りたいと思っているので、自分自身の成長も含めて一緒に頑張れる選手がいちばんでした。だから田口でした」

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 まずは所属先のチームの監督に話をするところから始まった。

「僕の思いを伝えながら、彼女のチームでの役割もきっとあったと思うので、押しつけるのではなく選択肢の一つとして考えてくれませんかと話しました。相談したのはいつだろうな……。パリオリンピックの前ですね。たぶん、多くの人が(東野との)ペアを継続すると考えていたと思うので、監督も多少驚いたと思います」

 その後、エントリー期限がパリ五輪前に設定されていた全日本社会人バドミントン選手権に、田口とともにエントリーするに至った。

渡辺の依頼に、田口が返した言葉とは?

 田口と直接話す機会は、パリ五輪の直後に訪れた。

「ミックスダブルスという新しいものに挑戦する難しさもあるし、きっと迷いはあったと思うし、僕は決めつけるのはあまり好きじゃないので、やってみて合わなかったらやめて全然いい。きっと田口の方が選手生命は長いし、これからなので、田口が思うように選手生活を生きればいいし、プレーをしていけばいい、そういうふうに言いました」

 田口の返事は「頑張らせてください」だった。

「ほんとうの胸の内は分からないですよ。ただ、そう言ってくれたのは、僕自身はうれしかったですね」

 デビュー戦となった全日本社会人バドミントン選手権では準決勝に進出、そこで敗れ大会を終えた。その成績以上に、渡辺にとって印象深い時間となった。

「感じたのは伸びしろばかりでした。2人で練習も積めていない中で、能力としては問題なかったし、もちろん緊張とかプレッシャーは大きく感じていたのかなと思いますけど、それはあって当然のことで、これからどうとでもなる話です。一生懸命にプレーする姿とか、ミックスダブルスの経験が浅くて思い通りいかない中、それでも勝ちに結びつけようという執念というのは感じて、僕としてはプレーできてよかったし、やっぱり一生懸命やる選手だなというふうに改めて再確認しました」

【次ページ】 「田口は気遣い屋です」「とんでもない成長力だな」

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