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3連勝のオスカー・ピアストリがマイアミで見せた衝撃的なオーバーテイク…フェルスタッペンを自滅に誘った頭脳的アプローチとは
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph byMcLaren Racing
posted2025/05/09 11:04
マイアミGPの1コーナーで競り合うピアストリ(右)とフェルスタッペン
ただし、多くのファン、そしてライバルたちが驚いたのは、この成績だけではない。その内容が衝撃的だった。特にサウジアラビアGPとマイアミGPで見せた4連覇王者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)との攻防は、ピアストリの秀逸さを物語っていた。
フェルスタッペンは高度なドライビングテクニックを持っているだけでなく、バトルでは非常にアグレッシブになるため、攻略するのが最も難しいドライバーだ。それゆえ、ライバルたちは時に限界を超えようとして接触事故を起こすことが珍しくなかった。メルセデス時代のルイス・ハミルトン、ルクレール、ノリスなどトップドライバーですら、フェルスタッペンを攻略するために何度も痛い目に遭ってきた。
ところがピアストリは今年2度フェルスタッペンとバトルを演じたが、いずれも勝利している。その理由は単にマクラーレンのマシンがレッドブルに比べて速いからではない。フェルスタッペンの攻撃的なドライビングに対し、ピアストリはほかのドライバーたちとは異なる冷静かつ頭脳的なドライビングで対応し、完全に封じ込めている。
4連覇王者の攻略法
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マイアミGPでの14周目の1コーナーでのバトルが、そのいい例だ。最終コーナーでトップを走るフェルスタッペンのスリップストリームについたピアストリは、ホームストレートでサイド・バイ・サイドのバトルを演じた。ピアストリはその瞬間をこう振り返る。
「今日は最初からペースが良かったので、抜けるかどうかではなく、いつ抜くかだけの問題だった。ランドもいいペースで後ろに迫ってきているのがわかっていたので、できるだけ効率的に抜きたかった。できるだけ早く抜きたかったけれど、焦って無理やり抜くのではなく、クリーンに抜くことが大切だった」
しかし、相手はフェルスタッペン。可能な限り抵抗してくることは目に見えていた。昨年のオーストリアGPではノリスがフェルスタッペンを抜こうとして接触事故を起こしてレースを途中で終えた。このマイアミGPでもノリスはスタート直後の1~2コーナーでフェルスタッペンとサイド・バイ・サイドの攻防を演じたものの、ノリスが押し出される形でポジションを大きく落としていた。そのバトルを後方から見ていたピアストリは、こう考えていた。

