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「ユウキならタクマもカムイも超えられる」元F1ドライバーも期待する角田裕毅の後半戦とステップアップの可能性
posted2023/08/23 11:03
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
2023年のF1の前半戦を締めくくるベルギーGPの前日、角田裕毅はアルファタウリのフランツ・トスト代表と2人っきりで話をしていた。遠くから見ていても、シリアスなテーマについて話し合いをしているのがわかるほど真剣な表情だった。そのとき話し合った内容について、角田は後日、次のように教えてくれた。
「『ダニエルが加入したからといって、あまり意識せずに、ユウキは自分のやりたいようにやれ』と言われました」
ダニエルとは、この前週のハンガリーGPからニック・デ・フリースに代わって、アルファタウリに加入してきたダニエル・リカルドのこと。リカルドはF1で通算8勝したトップドライバーのひとりで、角田にとってこれまでのチームメートの中で最も実績があるベテランだ。しかし、ここ数年は精彩を欠いて昨年限りでシートを失い、復帰戦のハンガリーGPは半年ぶりの実戦だった。
そのリカルドに角田は予選とレースで負けた。角田にとってショックだったのは結果で負けたことだけでない。リカルドの仕事の進め方やその態度が、これまで経験したことがない大人のアプローチだったことだ。
負けて痛感したリカルドとの差
「3年目の今年はこれまで以上にチームと密にコミュニケーションをとっていたつもりでしたが、それでもコース上の走りでチームを引っ張って行こうとしていたところがあり、成績が悪いとチームとのコミュニケーションが雑になることもありました。でも、リカルド選手はどんな状況でも何番手を走っていようとも、チームを鼓舞して常にチームと一緒に戦っていました」
リカルドの存在を角田は「大きな壁」と表現し、「その大きさは想像をはるかに超えるほど大きかった」というほど衝撃的だった。トストと話をしていたのは、そんなときだった。