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「1位のほうがおかしいんですよ(笑)」優勝→“96敗”のどん底で元ヤクルト監督・真中満が「嵐の曲を聴いていたら涙が」…天国と地獄の監督人生
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2025/05/07 11:04

天国から地獄へ。優勝した2年後に96敗を喫した最下位シーズンも含め、監督人生を率直に回想してくれた真中満氏
「ベンチでえらく怒っていて、外野の守備シフトのことを言い出したんですよ。長打警戒で後ろに下げていた時に、たまたま前に落ちてヒットになってしまったことに苛立っていたのでしょう。何とか取りなそうとしたんですけど、オンドルセクは怒りが収まらなくて僕の体をちょっと突いたんですよ」
周囲のコーチたちは血相を変え、ベンチ裏は騒然とした雰囲気に包まれた。オンドルセクは翌日から自宅謹慎処分となり、数日後に首脳陣と球団幹部に謝罪して練習を再開したが、7月中旬に有給休暇を取得して帰国。そのままシーズン途中での退団が決まった。首脳陣への造反とも言える行為だが、実は当時の真中監督はオンドルセクの早期復帰を望んでいたのだという。
本当は使ってあげたかった
「和を乱す選手はチームの士気に影響するから良くない、というのは一般論。でも現場の監督からしてみれば、少々チームの和を乱しても抑えてくれるクローザーだったら絶対欲しいんですよ。空気が悪くなろうが、お互いプロなんだから試合になれば関係ないし、多少チームワークが乱れたとしても勝てるならそっちを選ぶというのが僕の考え。オンドルセクもすごく神妙に謝ってくれましたし、僕はそのまま試合に使ってあげたかった。
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でも、やはりコーチの意見を聞くと反対が多かったんですよ。現場のコーチとしては扱いづらいし、他の選手への影響も考えるわけです。そこはどちらが正しいというわけではなく、監督とコーチの立場の違いなんだな、と感じました」
チームに慣れが生じていた
2017年には、さらにチーム状況が落ち込んだ。畠山、川端、雄平、秋吉亮ら優勝メンバーが軒並み長期離脱。補強した外国人選手は不発に終わり、前年に2年連続トリプルスリーを達成した山田哲人までもが不振に陥った。5〜6月に10連敗、7月には14連敗と2度も大型連敗の泥沼にはまり、最後まで負のループから抜け出せなかった。