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野球善哉BACK NUMBER
「西武の武内クラス」なんて簡単に言えない! 武内夏暉23歳が“普通の新人王”でなく“スーパー”なワケ…チームが不成績で「逆にいい投球」に!?
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/05/05 11:03

昨年チームが91敗を喫するなかで10勝を挙げ新人王。武内がいかに「とんでもない投手」であるかを本人の言葉で探った
「柳田さんはオーラもありましたし、大きかったですね。でも、すごく楽しみでした。憧れというのもありましたけど、それまでの試合でいい感じで来ていましたし、ソフトバンクを相手にどれだけ通用するのかなという気持ちでいたんで」
左打者のインサイドという難しいコースに投げ込む強いストレート。スライダー、チェンジアップ、そして、この日から多く使い始めたカーブを巧みに操り、大学時代までの武内とは別人のような投球が開花し始めていた。
「このルーキーすごいっす」
武内にとって大きな存在となったのが、捕手を務めるベテラン炭谷銀仁朗だ。「そんな攻め方があるのか」と武内の野球観を変えるくらいのリードをしてくるベテランの配球に、投手としての能力がどんどん引き出されていった。
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大学時代にはほとんど投げなかったカーブは、武内本人からしてみれば自信のある球ではなかったそうだが、これを使うことによって潜在能力が最大限に引き出されたという。
炭谷は「このルーキーすごいっす」と当時からその適応能力の高さを口にしていた。
「投げるたびに、こっちの要求に応えていくというか。しっかりこっちの意図を分かって投げてくるんです。カーブはソフトバンク戦から使い始めたんですけど、『カーブ使うからね』っていったら、ここ一番でいいところに投げてきますから。
本人は元々自信はなかったみたいですけど、絶対に使える球やから、と言い聞かせたら、それですからね。どんなことを要求しても全部、応えていく。そんなルーキーいないですよ」
自信のなかった新たな球種を使い始めたのが強力打線のソフトバンク相手で、そこで一発回答を出すとは、とんでもない才能と言うしかない。
ソフトバンクの「武内対策」を超える投球
実はこの試合、ソフトバンクは左投手の武内に対してあえて左打者を並べてきていた。武内のように、右打者の外に落ちる球を持っている左投手は、右打者よりむしろ左打者に苦労するはずと小久保裕紀監督が踏んでの策だったが、その思惑を超えてきたというわけだ。