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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「ストライクがとれるのがアマのコントロール…じゃあ、プロはなんじゃ?」元阪神のレジェンドが90歳で没…“精密機械”小山正明が語った「極意」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/03 11:06
阪神やロッテなどで活躍した300勝投手の小山正明。その正確なコントロールは「投げる精密機械」と評された
私が高校生だった1973年までの現役生活で、ほとんど巨人の試合しかテレビ中継のない時代だったから、阪神、ロッテ、大洋で長く投げた小山投手の記憶は、うっすらとしかないが、スラリとした長身から長い右腕を投げ下ろし、「エイ、ヤー!」の勇ましいタイプではなく、涼しげな表情でスイッ、スイッと投げているように見えていた。
「今のプロ野球で、インコースのストライクゾーンにきっちり投げられるピッチャーって、おるんかなぁ?」
その日の語りのテーマは、「プロのコントロールとは?」だった。
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ご本人がコントロールの達人のような方だったから、話の内容は、その大切さについてのことが多かったと、あとで、先輩の記者さんが話していた。
「今やったら、誰やろ? ちょっと前なら、東尾(修)とか北別府(学)とか、おったけど、今、おるんかなぁ。インコースにきっちり投げきれる技術持ったやつ?」
“精密機械”が語った「内角に投げ切る技術」
居合わせた記者からは、名前は挙がらなかった。
「ボールって、ほれ、こんなに硬いんやで」
かたわらのベンチに、握ったボールをガンガンぶつけてみせる。
「こんなんが140キロかなんかで当たってみい。ヘタしたら、死にますよ、これ。死なんまでも、頭、顔、グリップ……みな、当たったら野球選手として致命傷になりかねん場所や。投げるほうも、それなりの責任持って投げんとな。人の体傷めるもん、投げるんやからな」
ならば、内角に投げきる技術とは、どのようにして身につけるのか?
「精密機械」の答えは、実にシンプルなものだった。
<次回へつづく>

