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「常に酷評でした」監督・野村克也に公開説教された“田中将大の同期ドラ1”…楽天コーチ永井怜から“将大へのエール”「勝ち星を増やせる力は」
text by

間淳Jun Aida
photograph byToshiya Kondo
posted2025/04/24 17:02

2007年、ルーキー時代の楽天・田中将大
選手の性格や自身が発する言葉の影響を考えて、野村監督は選手と接していたと思っている。永井はプロ1年目に「自分にとっての大きな転機」となる出来事があった。
先発ローテーションに入って最初の頃は、安定した投球を続けていた。だが、徐々に相手打者に対応される場面が増えていく。その原因を球速と考えた永井は、速球のスピードに打開を求めた。
公開説教「お前の持ち味は何なんだ?」
ところが、状況は改善しない。むしろ、悪化した。ある日、先発して早々に交代を告げられた永井はベンチで野村監督に話しかけられた。
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「お前の持ち味は何なんだ?」
東京ドームのベンチに立たされる公開説教。悔しさが倍増する。ところが、同時に目が覚めた。
「周りの投手は自分より球が速く、そのレベルに合わせないと打者を打ち取れないと思い込んでいました。野村監督から直接声をかけられる機会はめったになかったこともあって、心に響きました。自分を見失い、間違った方向に進んでいた私は野村監督の言葉で自分がやるべきことに気付きました」
永井の速球は140キロ前後と決して速くない。それでも、落差の大きい100キロ台のカーブを打者の脳裏に刻むことで、球速表示以上のスピード感を打者に与えられる。その緩急や制球力が永井の特長であり、野村監督が評価する点だった。自分を取り戻した永井は1年目に7勝を挙げた。その後も2ケタ勝利を2度記録し「あの言葉がなければ、一軍に定着できなかったと思います」と振り返る。
プロに入る選手は誰もが高い能力を持っている。そのポテンシャルが花開くかどうかは、指揮官との縁が小さくない。田中は野村監督との出会いもあって、順調にキャリアを重ねた。
同期からコーチの立場となって感じた“田中将大”
2014年からは舞台を米国に移し、ヤンキースでローテーションの一角を担った。米国の7年間で78勝をマークし、日米通算200勝は目前に迫っている。
ここ数年は右肘のクリーニング手術を受けた影響もあり、納得のいく成績を残せていない。昨オフには愛着のあった楽天を離れ、新天地の巨人で復活を期すシーズンに入っている。田中が楽天復帰後に苦しんでいる時期、永井はコーチの立場で接していた。
主にアドバイスして一緒に取り組んできたのが「縦振りへの回帰」だった。投手には大きく分けて、体を縦に使って腕を振り下ろして投げる「縦振り」と体の軸を横へ使う「横振り」の2つのタイプがある。それぞれにメリットがあり、優劣はない。田中は本来縦振りの投手だが、近年は横振りになっていたと永井は指摘する。