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「開幕戦は俺が投げる」日本ハムのエース・伊藤大海に新庄剛志監督が打診した“意外な登板日”…その意図は?「ホーム開幕がソフトバンク戦だから」
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酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/01 11:00

昨季は14勝をあげ最多勝を獲得した日本ハムの伊藤大海。新庄剛志監督から告げられた意外な登板日とは…
「ホーム開幕がちょうどソフトバンク戦だから」
ファイターズは25年3月28日から敵地でライオンズとの開幕カードを終えると、本拠地開幕を迎える。伊藤は新庄からホークスとの初戦、4月1日の登板を打診されたのである。
伊藤は屈辱を思い出していた。1カ月半前の10月中旬、ファイターズは日本シリーズ進出を懸けたクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージで、パ・リーグ覇者のホークスに挑んだ。伊藤はその初戦に先発したが、今宮健太と栗原陵矢にアーチを浴びるなど、6回を持たずに4失点で降板し、痛恨の敗北を喫していたのである。
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忸怩たる思いを抱いているのは新庄も同じだった。CSが始まる前に先発陣を組むなか、マリーンズとのファーストステージで伊藤を温存することを決断した。ホークスとの戦いをにらんだ秘策である。マリーンズには苦しみながらも瀬戸際で勝った。その余勢を駆ってホークス戦は一気に主導権を握るつもりだった。しかも初戦は頼みの綱の伊藤だ。ここまではシナリオ通りだった。だが、思惑は外れた。エースは打ち込まれ、その敗戦が尾を引き、志半ばの3連敗で敗退していた。
伊藤は新庄の悔しさをわかっていた。だから、話を聞きながら、胸に秘める開幕投手への思いを主張することもなく、指揮官の意図を受け容れた。
新庄はさらに、開幕投手の候補としてプロ2年目のシーズンで7勝を挙げ、防御率2.38の好成績を残していた金村尚真の名前を挙げて説明した。
「金村はオフシーズンを含めて、開幕に向かっていくところの成長が必ずあると思う」
新庄はこの3年間、球界の慣例にとらわれずにチームを鍛え上げてきた。開幕投手の位置づけもそのひとつだろう。本来ならエースの勲章であるのだが、新庄は選手の成長を後押しする手段として利用する。1年前、伊藤も新庄から開幕投手に指名されたことで大きく飛躍した。監督が期待株の金村を推すのは伊藤の成功も頭のなかにあるからだろう。
自分は「真ん中ぐらい」という感覚
伊藤の人生が大きく動きだしたのは2年前の秋である。