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「手術明けでパフォーマンスを上げる」初めて肘にメスを入れたカープの守護神・栗林良吏が「ケガの功名」で得た正しい身体の使い方
text by

前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2025/03/17 11:00

肘の手術明けながら、キャンプから順調な調整を続けている栗林
「人の身体って本当に不思議です。僕たちはどうしても感覚でやりがちで、まだまだ自分の身体のことすら知らないと痛感しています。セットポジションのグローブの位置を変えるだけでも投球動作が変わる。そのポジションを探しています」
新フォームでは、昨季までのように左足を止めずに踏み出す形が注目されている。だが、見た目には分からなくても、構えの姿勢から投げ終わりまで意識の変化は多岐にわたる。
「小さな変化が全部かみ合っていい方向にいけばいいですし、その小さな変化が大きな変化につながると思う」
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キャンプ2日目にブルペン入りし、2月20日には打者が相手のシート打撃に登板した。3月8日にはヤクルトとのオープン戦に登板。シート打撃では思ったような出力が出なかった直球は最速148キロを計測した。直球に威力があったことは、相手打者のバットを押し込んだようなファウルが示していた。
手術がもたらす進化
開幕に向けて一歩ずつ段階を上がっていく栗林が目指すのは、復帰ではなく「進化」だ。
「大瀬良(大地)さんのようにパフォーマンスを上げることが一番大事だと思っている。手術明けのシーズンでしっかり結果を出せれば、次に手術する人にマイナスな手術じゃないと示せる。そういう点でも何とか結果を出したい」
23年に右肘クリーニング手術を行った大瀬良は、昨季25試合に先発して6勝6敗も1.86の防御率を残し、6月のロッテ戦ではノーヒットノーランを達成した。
肘といえば「トミー・ジョン手術」も知られるが、手術は「元に戻す・治す」ものではなく、「強く」するものなのかもしれない。1年前に同じ手術から完全復活した先輩のように。今季は栗林自身が、強くなれることを証明してみせる。
