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「手術明けでパフォーマンスを上げる」初めて肘にメスを入れたカープの守護神・栗林良吏が「ケガの功名」で得た正しい身体の使い方

posted2025/03/17 11:00

 
「手術明けでパフォーマンスを上げる」初めて肘にメスを入れたカープの守護神・栗林良吏が「ケガの功名」で得た正しい身体の使い方<Number Web> photograph by KYODO

肘の手術明けながら、キャンプから順調な調整を続けている栗林

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 2月の広島春季キャンプ。メイングラウンドで打球音が活発に響く中、栗林良吏はひとり静かに屋内練習場で自分の身体と向き合っていた。

「これまでなぜ肘に負担がかかってしまっていたのかをコーチやトレーナーと話しながら、課題練習を含めて、なるべく肘に負担のかからない身体の使い方を求めてやってきました」

 プロ4年目のシーズンを終えた昨年10月、人生で初めて右肘にメスを入れた。1年目から37セーブを挙げて新人王に輝くなど、栗林は広島の守護神としてチームを支えてきた。昨季は永川勝浩と並ぶ球団タイ記録の自己最多38セーブをマーク。4年で216試合に登板し、通算124セーブを挙げただけでなく、東京五輪での金メダル獲得など侍ジャパンとしても活躍してきた。

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 もちろん“勤続疲労”はあったが、手術に伴いそれだけが理由ではないと気づかされた。リハビリ期間に自身の投球フォームを分析し、右肘に負担のかかる身体の使い方になっていたことが分かったのだ。

トレーナーとの対話で得たもの

「自分では思っていなかったけど、指摘されたことで『だから肘が痛くなっていたのか』と理解できた」

 栗林の場合、コッキング期(投球において、腕を後方に引いて肩と肘を最大限に外旋させる動作)で肘が下がっていたことが一因だと分かった。

 けがをしない身体づくりだけでなく、バイオメカニクスなどの視点をもつ物理学的なアプローチから身体の使い方を見つめなおした。投球を再開した1月から、理学療法士の野呂吉則トレーナーとマンツーマンで過ごした。野呂トレーナーは三重県にある「みどりクリニック」に所属しながら、キャンプ中やシーズン中など一定期間、球団に帯同。球団トレーナーとも密に連携を取り、菊地原毅投手コーチにも信頼を寄せられている。

「自主トレから見てもらっているし、こちらからも気にせずにやってくださいと。もちろん、そのプロセスを共有しているし、選手が良くなるために力を合わせることは当たり前のこと」(菊地原コーチ)

【次ページ】 繊細なメカニズム

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#栗林良吏

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