「授業後ラモスらと紅白戦」15歳でプロ、40年前の天才高校生・菊原志郎が“最強”読売クラブで過ごした青春時代「しかも…中央大に現役合格する秀才」 

　フジタ工業のセンターバックだった森淳（現ヴァンフォーレ甲府スカウト）は、驚きを隠せなかったという。いまでこそ高校生のJリーグ出場は珍しくないが、当時は異例中の異例。大卒で企業に就職し、日本リーグでプレーするのが、一般的な時代である。高卒で活躍する選手もまだ珍しかったほど。まして昭和61年にインターネットは普及しておらず、情報があまりなかったこともあり、最初のインパクトはより大きかったようだ。

「子どものような体格（167cm、64kg）の高校生が、いきなり試合に出てきたかと思えば、大人のなかで普通にやれていました。しかも、あとで聞けば、1年生だって。足元の技術は高かったですね。トラップはピタリと止まるし、ドリブルでもスルスルと抜いていく感じでした。相手にうまく接触しないでプレーしていたと思います。私が受けた印象は、いまの選手に例えれば、香川真司みたいだったかな」

苦手だったという左足の練習を繰り返す菊原志郎（写真：本人提供）

「いまのお前は客寄せパンダだ」

　同シーズンは退任したルディ・グーテンドルフ監督の後を継いだ代行監督の千葉進のもとで7試合に出場。『天才少年』の見出しが躍り出したのもこの頃である。サッカー専門誌だけではなく、週刊誌に取り上げられるなど一部で話題にもなるが、16歳の高校生は落ち着いていた。父の言葉を胸に留め、勘違いすることもなかった。

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「『いまのお前は客寄せパンダだ』って。いろいろな人が来て、おだてられても、それを真に受けてはいけない、と。自分でもそう思っていたので、黙々と練習していました。『天才』の言葉も周りが言っていただけなのでプレッシャーにはならなかったですが、常に人と違いを出さないといけないと思っていたし、いいプレーをして周囲が驚いたときは楽しかったですね」

©︎Hideki Sugiyama

　いまとはサッカーを取り巻く環境も違った。学校の友達や先生たちは、選手としての菊原の存在をよく分かっていなかったという。

「あの頃は高校生が日本リーグで試合に出ても、言うほど騒ぎにはならなかったですよ」

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