- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
「こんな身体で妊娠できるのか」悩んだ無月経…レスリング登坂絵莉が女子選手に伝えたい大切なこと「リオ五輪金…1年半止まっていた生理が」の壮絶ストレス
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byWataru Sato
posted2025/03/06 11:02
女性アスリートにまつわる問題について、率直に語ってくれたレスリング金メダリストの登坂絵莉さん
伝えたい「できるだけ早く婦人科へ」
現役時代に月経に関して悩んだからこそ、登坂さんは同じような悩みを抱える後輩たちや女性アスリートに自身の経験を伝えていきたいと考え、発信している。
「月経が来ないという状態でも婦人科に行かずにそのままにしている選手が多いと思いますし、実際にそういった声もよく聞きます。でも、やっぱり来るべきものが来ていないのは大変なこと。身体になにか不調を抱えていたり、病気が隠れていることもあると思うんです。
できるだけ早く専門の先生に診てもらいたいし、あるいはまずは先輩に相談するのもいいと思うんです。とにかく早く動くべきですね。きちんと原因を追究して対処することが大切。そういった不安を取り除くことで精神も安定しますし、より競技に集中することにもつながりますよね」
十分とは言えないケア
ADVERTISEMENT
10代、20代の若い女性が周囲に月経に関する悩みやトラブルを相談するハードルが高いことは容易に想像できる。実際、登坂さん自身も婦人科を受診することに「恥ずかしいとか、周囲に誤解されそうだと思うと行きづらい」という抵抗感を持っていたと言う。
それでも思い切って婦人科の扉を叩いたのは、心配性の性格と将来への危機感を抱いていたからだ。
「一度不安に思ってしまうと競技に集中できなくなってしまうくらい心配性で(苦笑)。常に最悪な状況ばかりを考えてしまうので、“ああなったら嫌だから病院に行こう”と思って早めに動くタイプでした」
近年はトップアスリートだけでなく部活動に励む一般の学生に対するケアも行う女性アスリート専門外来も徐々に増えてきている。それでもまだ十分だとはいえない。
自分の身体を大切にして
アスリートを取り巻く環境が今後より整備されることを登坂さんは強く願っている。
「婦人科でスポーツや競技特性まで理解がある先生に出会える機会はまだまだ少ないと感じています。だからこそ今後はそういった環境がさらに整ってほしいです。正直なところ、私も現役当時はそんなに深く考えていませんでした。でも、人生は競技をしている時間よりもその後の方が圧倒的に長いので。あとで後悔しないように」
現役時代の経験を通して自分の身体や生理に関する知識を正しく知っておくことの大切さをあらためて痛感した登坂さん。
自分の身体を大切にしながら競技と向き合ってほしい――。
その言葉には次世代の女性アスリートに対する思いが溢れている。(前編から続く)



