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「4試合連続日本新記録!」も…田中希実が明かした“焦り”「世界との差を感じています」「スピードを取り戻さないと勝つことは永遠にできない」 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byShizuka Minami

posted2025/03/03 11:03

「4試合連続日本新記録!」も…田中希実が明かした“焦り”「世界との差を感じています」「スピードを取り戻さないと勝つことは永遠にできない」<Number Web> photograph by Shizuka Minami

米国での室内大会で4試合連続で日本記録を樹立した田中希実(25歳)が、その手応えと焦りを明かした

 中学生から12位で襷を受け取ると田中は勢いよく出したが、思うような走りができず10位でフィニッシュ。タイムも32分28秒で区間6位と本人的には納得いくものではなかった。チーム事情で10キロを走る可能性も考え、年末年始は距離も踏み準備は出来ていたはずだったが、想定外の結果に田中は動揺した。

 その後、すぐに恒例のケニア合宿に向かったが「(一緒に走っている選手たちの)イージージョグにもついていけなかった」と振り返る。

(なぜ走れなかったのか)と自問自答を繰り返し、止まってしまった気持ちが体にもブレーキをかけた。

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「駅伝の翌日はいつも練習を休むのですが、今回は練習をしてしまって……」と心身のズレを本人も感じていた。

 ケニアで満足な練習が積めない中でも室内試合で結果を残せたのは地力がついたこと、またレースでの経験値が上がったからだ。コンディションを加味すると100点の出来にも感じるが、田中自身は日本記録にも「(うれしさと課題が)半々くらい」と手放しで喜ぶことはない。

 練習で取り組んできたこと、一つずつのレースでの課題をレースで出せたかどうか。さらに「どうしたら世界と差を詰められるか」「そのために何をしたらいいのか」を田中は常に考えている。

世界で戦う中で、手応えと“焦り”も…

 2021年東京五輪で田中は日本人女子選手として初めて1500mで3分台を出し、8位入賞も果たした。それから3年、パリ五輪準決勝で再び3分台を達成したが、決勝進出はならなかった。

 世界の中長距離のレベルアップに田中も必死で食らいついているが、手応えと共に焦りも抱える。

「レース前は(相手について)深く考えないようにしていますが、レース後に反省点を振り返った時に足りない部分が出てくるんです。今後こうしていけば詰められるのでは、と目処を立てますが、最近は努力で埋められる問題じゃないかもしれないという気持ちが生まれ出しています」

 トップの海外選手のレース中の爆発力や圧倒的なスピードがそれに当たる。

「今までは全部努力で埋められると思って、反省点を次に繋げられてきました。でも最近は反省点の中でもできることとできないことが自分の中ではっきりしないんです。私はコツコツと努力をしてここまで来られたんです。でも海外には天才型の選手がいて、彼らが努力をしたら私との差は広まる一方です。私も少しずつ進化はしていますし、手応えはあります。でも他の選手よりチャンスがたくさんあるのに、ちょっとずつしか伸びていないと感じることもあるんです」

 特に感じるのは、自身のスピードの伸び悩みだ。

「世界との差を感じています」

 日本新を出したボストンの5000mレース後、田中はこう自己分析した。

【次ページ】 スピードとスタミナを同時にどう強化するか

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