- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
“日本記録を連発”の田中希実が楽しむ自分へのご褒美とは…世界を転戦する“ノマドランナー”が語る一番好きな国「自分の居場所は世界各国にある」
posted2025/03/03 11:04

米国での室内大会で4試合連続で日本記録を樹立した田中希実(25歳)。世界を転戦する理由を明かした
text by

及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Shizuka Minami
新記録を出したご褒美とは?
レース翌日、雪景色のセントラルパークを見下ろすカフェで田中希実はフォンダンショコラとアイスクリームを幸せそうな表情で頬張っていた。
南カメラマンの「日本新を出したら、何かご褒美を買ったりしますか」という問いかけに田中はちょっと首を傾げた後に「これですね」と笑いながらケーキを指差す。
日本新を連発している田中が新記録を出すたびに買い物をしていたら、スーツケースはあっという間に膨らんでしまう。ケーキや美味しいものを食べるくらいがちょうどいいのかもしれない。
「(田中さんは)ノマドランナーですね」
ADVERTISEMENT
今年も1月に京都で行われた全国女子駅伝の後、すぐにケニアで合宿を行い、1月下旬から米国東海岸のボストンで2試合、ニューヨークで1試合を走った。その後、欧州ポーランドで800mに出場予定だったが、出発前日に航空会社のストで遅延になったため、急遽、予定を変更し、ボストンで5000mに出場し、室内4レース日本新記録という偉業を達成した。
今後は日本で調整し、3月の世界室内選手権に向けて練習をするほか、4月以降もジャマイカ、熊本、米国などでの試合が既に予定されており、今季も世界各国を移動しながら試合を重ねていく。
メジャーリーガーやサッカー、バスケットなど、海外で試合をする選手は増えているが、田中は彼らとは異なり海外拠点はない。大会のある都市に行き、練習し、レースを走ってまた次の都市に移動する。
特定の拠点を持たず移動しながら働く人を「ノマドワーカー」と呼ぶが、「(田中さんは)ノマドランナーですね」と言うと田中はにっこり笑って応じた。
「小さい頃から母が海外のマラソンに出場しているのを見て、自分もいろんな国に行ってみたいと思っていました。でもこんなスパンで巡るとも馴染みのなかった国をこんなに訪問するとも思わなかったですけど」
これまで訪れた中で一番好きな国にラトビアを挙げる。