炎の一筆入魂BACK NUMBER
森下暢仁、名実ともにカープの顔へ…「先頭に立ってやっていく」初の開幕投手抜擢で問われる自覚と覚悟
text by

前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/03 11:00

キャンプでは初日からブルペン入りするなど意欲的な調整を続けてきた森下
1月のある日、森下が床田寛樹と打撃談議をしていた流れで両者の投球の話になると、床田は率直な意見を口にした。
「『なんでもっと勝たれへんの?』と思う。暢仁は『これでいいだろう』って見えるときがある」
打撃について話していたときのような笑顔ではなく、真剣な表情だった。非難しているわけではない。同じ投手としてともに戦い、その能力を知っているからこそ「もっとできるだろう」というもどかしさがあふれ出たように感じられた。
ADVERTISEMENT
床田自身は、言葉の意図をこう説明する。
「上の世代、僕らの世代が抜けた成績を残せていないから、暢仁はこれでいいと思ってしまっているのかもしれない。たとえば(元オリックスで現ドジャースの山本)由伸と一緒にやっていたら、由伸と同じ成績を残せていたと思う。だから、僕が森下よりいい成績を残し続ければ、負けず嫌いなので、より(高みに)行ってくれるんじゃないかなって思う」
キャンプ初日のブルペン入り
あえて森下の壁になることを伝えた先輩選手の心意気に、森下が応えないわけがない。
「今年はより一層やらないといけないシーズンだと思っている。優勝、日本一のために、しっかりとチームを引っ張って行けたら」
そう誓った言葉は、キャンプから行動に表れた。日南キャンプ初日に自身初めてブルペン入り。過去には沖縄でキャンプインした21年のキャンプ初日にブルペン入りしたことがあったが、それ以来の2月1日のブルペン入りだった。開幕投手候補の中でただひとり、ブルペン入りした右腕ははっきりと口にした。
「監督も言っていた通り“争い”というところを意識して、初日から入れるのであれば入ろうと思っていました」
開幕投手は23年まで5年連続の経験を持つ大瀬良大地と床田との争いと見られていた。そこに注目するメディアに対して、新井貴浩監督はキャンプ初日から得意のジョークでけむに巻いた。
「開幕投手は、塹江(敦哉)です」