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「ウザイおじさんになってやろうと」織田信成(37歳)が明かすマツケンサンバ秘話…引退後の新たな野望とは?「40歳で4回転跳んで、ギネス申請」
posted2025/03/01 11:04

昨年12月のフィギュアスケート全日本選手権に11年ぶりに出場し4位となった織田信成(37歳)。マツケンサンバで会場を大いに沸かせた
text by

野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
「なんでこのおじさん4回転跳べるの!」みたいな…
昨年12月の全日本選手権に、37歳で11年ぶりの出場を果たした織田信成。会場を大いにわかせた“マツケンサンバ”の余韻は、今も残っている。そんな織田が、全日本選手権で『これだけは絶対にやる』と決めていたことがあった。
「やっぱり若い子達からしたら、おじさんにジャンプを成功させられるのって嫌だと思うんです。『なんでこのおじさん4回転跳べるの!』みたいな感じ。だから、もっとウザいおじさんになってやろうと思って、公式練習では『この中で誰よりも一番多くジャンプを跳んでやるぞ』って思ってました」
今季のはじめ頃は、長年スケートを続けてきたことで股関節に痛みがあり、今季限りでの引退を決意。それでも最後の全日本選手権では4回転トウループを決めようと、調整してきていた。
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「後輩達に『あの人に出来るんだったら、自分にも出来る』みたいに、何かを感じてもらいたかったんです。そこまでして、自分がこの歳で試合復帰した意味があるかなと。『見せられる背中は、全部見せて行こう』という気持ちでした」
11年ぶりの全日本選手権を戦うと、時代の変化を感じたという。織田の世代は、6.0点満点の旧採点で育ち、国際大会に出るようになってから新採点が始まった。しかし今回の全日本選手権で活躍した鍵山優真(21)、中田璃士(16)らは旧採点を経験したことがない。
「もう新世代ですよね。まだ、羽生(結弦)君、宇野(昌磨)君は6.0点満点をかすっていた世代なので、根本的なスケートに自由さや制限のなさがありました。でも今の子達は、ルールが明確化されたうえで生まれてきた。全部のエレメンツがきっちりしていて、スピンの回転数や、ステップでターンした後に(認定されるために)すぐに足をつかないとか、ジャンプの技術とか、すべてマニュアルどおり出来る。今の子達のエリート感が面白いな、楽しいなと思いました」
年齢差21歳の新世代「朝は跳ばない」
特に年齢差があったのは、ジュニアから推薦出場していた中田。なんと年の差は21歳だった。
「中田君とは、年明けのアイスショーで一緒に練習したのですが、朝7時半くらいの朝練で、ジャンプを跳ばないんですよ。なんでかなと思って聞いたら『普段、朝の貸し切りがないから朝練に慣れてなくて、怪我してもいけないので跳ばないようにしてる』って(笑)」
中田は、練習環境が整ったMFアカデミーで育った選手。同アカデミーでは、学校は休まずにしっかり通い、放課後のアカデミー生の貸し切りで集中して練習するという体制を取る。早朝5時6時に朝練をして、午後は一般滑走の人混みの中で練習していた織田さんの世代からすると、考えられないことだった。