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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校野球の名門校監督が規定違反で無期謹慎…「有望な中学生を探すことにエネルギーを割かれて…」激化する“勧誘合戦”に疲弊する現場のホンネ
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/02/25 06:01
甲子園という舞台の人気が過熱する中、有望な中学生を巡る青田買いを防ぐにはどうすればよいのだろうか? ※写真はイメージ
コロナ禍真っ最中の2020年。
甲子園大会が中止になってアピールの場を失ったプロ志望の高校球児たちのために、甲子園球場と東京ドームを会場にして日本高野連とNPBが開催した「プロ志望高校生合同練習会」。日本高野連とNPBが垣根を越えて実施したあの催しは、高野連の「快挙」だと考えている。
あれだけ、莫大なエネルギーを必要とする催しを成し遂げた高野連なのだから、「プレゼン集会らしきもの」なんて実現できないわけがない。むしろ、長年培った「腕」の見せどころがやってきたというものであろう。
「早大学院のような“名門”でも…」
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「早大学院のような“名門”でも練習参加やら、家庭訪問やらいろいろやらないといけないんですか? 選手なんて、黙っていても集まって来るんじゃありませんか?」
今回の騒動が起こってから、こんな素朴な疑問をいただいた。
確かに、「生徒」は集まってくる。毎年、募集人数の5倍も6倍もの受験生がやって来るが、だからこそ「選手」は集まりにくい。受けたって、受かりっこないと思われてしまう。だから監督は「ぜひ受験してください」と、頭を下げねばならなかったのではないか。
15年も高校野球の指導の現場にいた以上、ルールを知らないわけはないだろう。旺盛な意欲と情熱も、ちょっと過ぎると「ひとりよがり」になってしまう。特に指導者であればこそ、その線引きは常に意識しておかねばならない。
昨年の交通事故で負った頭の傷の回復が思うにまかせず、結局、これから先の現場復帰は難しいと、監督続行を断念したのが、暮れに近い頃だったと聞いている。名門校で高校野球の経験のある若い先生が指導を引き継ぐことも決まり、OBの間では慰労会も企画されていた矢先の処分だった。
最後は幸薄い結末になってしまった。「高校野球」と「甲子園」に魅入られることの怖さを、垣間見たような気がした。

